M. スコセッシ監督と大作ラストワルツ
グレイト・プリテンダーはザ・バンドのオリジナル曲ではない。
しかし、個人的にはバンドのカバーバージョンが一番気に入っている。

元歌は1955年に発表されたシングル盤で、歌っているのは
黒人R&Bコーラスグループのプラターズである。幾度かのメンバーチェンジを
繰り返しながらも活動を続けている長寿グループだ。昨年急逝した柳ジョージの
カバーも味わい深くで好きだ。(アルバムGood Timesに収録)
ここではザ・バンドについて触れておこう。カナダ出身の5人組で、全回紹介した
「ローリング・ストーン」誌選出の「100 Greatest Artists of All Times」で
第50位に選出されている。当初ボブ・ディランのバックバンドとして活動して
いた。彼らの「The Weight」は名曲だ。映画イージー・ライダーで使われたので
ご存知の方も多いだろう。1967年から1976年頃まで最も意欲的に活動していたが
76年に事実上の解散コンサートを名匠マーティン・スコセッシが映画化した。
それが「ラスト・ワルツ」だ。スコセッシ監督は自身の青春期が70年代のロック
黄金期と重なることもあって、ロック大好きおじさんなのだ。ディラン、ストーンズ、
ジョージ・ハリスンと有名アーティストを取り上げた作品を撮り続けている。

さて、♫The Great Pretenderはザ・バンド、1973年発表の「ムーンドッグ・マチ
ネー」に収められている。ロックン・ロールの名曲達をバンドの味付けで蘇らせた好企画だ。
「第三の男」のテーマ音楽まで入っている、私の愛聴盤だ。

Oh yes, I’m the great pretender
Pretending I’m doing well
My need is such
I pretend too much
I’m lonely but no one can tell

Oh yes, I’m the great pretender
Adrift in a world of my own
I play the game but to my real shame
You’ve left me to dream all alone

pretend とは「装う、ふりをする」という意味だ。よって the great pretender は
さしずめ「大いなる詐称者」くらいの意味か。ぴたっとする日本語が思い浮かば
ない。
そんな時は英英辞書を見てみる。
pretend: to behave as if something is true when you know it is not,
   in order to deceive people or for fun
と説明してある。「人を欺く意図で、あるいは悪気はなくても、事実ではないと
知りながらあたかも事実のように振舞うこと」だ。英英辞書にはことばの定義が
書いてある。「意味」ではない。英語でのコミュニケーションでは往々にして
単語が思いつかない、忘れてしまったということが起きる。そのような時は別の
言い方で説明できれば良いわけで、この説明能力をつけるには英英辞書は最適な
ツールとなる。辞書を引くのではなく、「読む」感覚だ。昔英語を学んでいた頃、
先生に英英辞書を使えと言われた。今ならその意味がわかる。英語は論理思考を
学ぶには向いている言語だ。まずは自分の知っている単語を英英辞書で読むことから
はじめてはどうだろう。