第7回 ファンサイト対談

デザインプロデューサー/Kom&Co.代表 小牟田啓博氏 × ファンサイト(有) 代表取締役 川村隆一

小牟田啓博(こむた よしひろ)デザインプロデューサー/Kom&Co.代表

1969年
神奈川県生まれ
1988年
神奈川県立弥栄東高校卒業
1991年
多摩美術大学プロダクトデザイン専攻卒業
1991年
カシオ計算機 デザインセンター入社
2001年
KDDIに移籍 au design projectデザインディレクター
2006年
デザインコンサルティング会社Kom&Co.を設立
京都工芸繊維大学特任助教授

デザインプロデューサー/Kom&Co.代表 小牟田啓博氏 × ファンサイト(有)代表取締役 川村隆一

プロダクトデザインに目覚めたきっかけ

川村
まずプロダクトデザインの世界に入ったきっかけを聞かせてくださいますか?
小牟田
父親がソニーのエンジニアで、モノづくりをしていた人でした。
子供のころから理系はつぶしが利くし、大学の難易度も高いことは知っていたのですが、どうにも成績が伴わなかったんです。(笑) 
そこで美術系なら理科系よりは入りやすいだろうということで、プロダクトデザインのある美術大学を受験しました。じつは、ここも入学倍率がそうとう高いことを後で知ったのですが、ともかく「気合い」で入学しました(笑)。
それからもう1つのきっかけは、 ある日近所のお兄さんが捨てようとしていた「カースタイル」という雑誌を貰い受けたのです。それを見て、こんなにかっこいい絵を描く仕事があることを知ったことです。
いま、思い起こすともう1つ、この世界に入るきっかけとなったことがあります。
中学生のころ、ちょっとやんちゃな生徒でした。美術と体育には少し自信があったのですが、素行が悪かったせいか、評価には反映しませんでした。ところが2年時の美術の先生が素行に関係なく実力で評価してくれたんです。このことがきっかけで、とても自信がつきました。もしかしたら、この道が職業になると感じたんですね。
川村
なるほど、心眼のある先生と出会いがあったんですね。

au デザインプロジェクトとは

川村
大学でプロダクトデザインを学ばれた後、auデザインプロジェクトに出会うまでの経緯は、どんなものだったんですか?
小牟田
モノづくりがしたくてカシオに入社しました。ここで、いまの自分のモノづくりに対する基本的な考え方を学びました。全てカシオにいたおかげですね。いうなれば僕にとって、実家みたいなものです(笑)。ここで培ったものを具現化したのが「auプロジェクト」だったんです。
このプロジェクトで学んだことは、モノづくりの中でデザインとは1つのパートに過ぎないということです。当たり前のことですが、マーケター、エンジニア、職人さんと「コラボレーション」をすることでしか優れたモノは生まれないということです。
川村
そこで、小牟田さんがプロデューサーとして「翻訳」するという力が必要だったのですね。今イチバン何が必要なのか、何がベーシックなのか、あるいは何が尖っているのかと、視野を広く持たないとダメなんですね。
小牟田
そこは市場に対するビジネス感覚が必要です。
川村
いくら製品が優れていても、投入時期が間違っているとダメですもんね。

その「翻訳力」をどうやって培うのか

小牟田
僕は何にもしているわけではなく(強調)、その道のプロを知っているというだけですね。友達になってしまえばいいわけで。(笑)
しいて言えば、「好きだ」ということでしょうか。それともう1つは仕組みをどう作るか。
僕は空手をやっているのですが、K-1グランプリで上位をキープしている選手も凄いと思うのですが、このK-1の仕組みを作った正道会館、石井館長の功績がすごいと思うんですね。
キレイな女性たちに「私は格闘技ファンなの」といわせてしまう功績のほうがはるかに大きいなと思いましたね。悪いこともやっちゃいましたけどね(笑)。
川村
そうですね。大きな枠組みを作ることで、全てのものはダイナミックに動くことができますよね。

プロデューサーとデザイナーの関係とは

川村
小牟田さんは普段から、優秀なデザイナーやクリエイターと繋がってお仕事をしていると思いますが、プロデューサーとして彼らに対して、ある世界観を提示して彼らが実際に動くというカタチなのですか?
小牟田
特にそこは意識していないですね。auデザインプロジェクトのような場合はそういうケースがありますが、そのほかの場合はいかに魅力的に見せていくかという具体的で地道な作業ですね。逆にいえばそのような方々が集まった場のパワーを加速させるのが僕の役目かな。しかしそれは様々な意見の真ん中をとって、中庸を取るのではなく、化学変化を起こさせるのが僕の役割だと思っています。

デザインプロデューサー/Kom&Co.代表 小牟田啓博氏

川村
いろんな定義の仕方あるけど「こんなスゴイ人ここにいるよ」という提示をすることが今の日本には必要だと思んです。個性というけれど、提示する人がいなければ気が付かないし育たない。なんとなく、最近ではベンチャーも叩かれるばかりで、個性をあまり表に出さないようにしている。
アメリカの大統領選などを見ると誰がなるにせよ個性を全面に掲げ、それぞれの候補が頑張っている。そして、結果として、アメリカという国は「再生力」があるな、と見える。それに比べると日本はそういう人が少ないように感じる。
小牟田
うーん、逆に私は多いと思います。日本の場合はそれを伝えようとしていなかったり、主張が日本では叩かれるから出さないだけで。スゴイ人だらけだと思います。
川村
小牟田さんはプロデューサーとして、どういう方法でその人たちをフォーカスできると思いますか。例えば、クリエイティブ力で突破するとか?
小牟田
リエイターの人たちが突破口だとは思いません。そうではなく、メディアが本当にいい仕事をしている人間を追いかけるべきだと思います。
ネガティブに捉えるのではなく、見方を変えるだけでフォーカスできると思います。僕の仕事はそうした人たちを盛りたて良いところをどんどん膨らましてやることだと思っています。
川村
ある意味、モノづくりをする人たちの「応援団長」ですね。
小牟田
まさにその表現はピッタリですね。

モノづくり、これからの行方について

川村
さて、これからモノづくりは何処に向かうと思いますか?
小牟田
今後はどんな製品やサービスも、お客様に対して本当に良いものでないとダメで、いまはその過渡期であり、これまでのダメなところの膿が出ている時期だと思うんですね。
川村
トヨタのライバルは日産でもホンダでもなく、テレビゲームや携帯だったりと、競合するのは業種を問わずボーダレスになってきていますね。
小牟田
それもありますし、もう一つの方向性は「買わない」ことだと思います。「買わなくても済む」ということがライバルなのではないかな、と。
川村
そういう意味ではモノづくりは非常に難しいですね。
小牟田
とはいっても買わないわけではないと思うのですね。衝動買いしてしまうわけで。
川村
小牟田さんにとって次のステージに向かう「キーワード」はどのようなものだと思いますか。
小牟田
うーん、「信じれるかどうか」「ほしいか」「わくわくするか」「楽しいか」「正義か」などだと思います。それは不特定多数の人々のために。
川村
ある意味で普遍性のあるものですね。ここが一番、厳しいところかもしれないですね。今後「買わない」がライバルになるとするとますます人の心の琴線(インサイト)に触れなければならない。
小牟田
少し、厳しい言い方をあえてすれば、そこに企業がお金を出して取り組んでいろいろ体系化していこうとしているけど、かなり難しいと思います。でも、だから挑戦のしがいもあるし、こそが人間のおもしろいところでもあると思っています。
川村
なるはど、これからモノづくりへの関わりがますます楽しみですね。あっという間に時間が経ってしました。今日は本当にありがとうございました。
小牟田
ありがとうございました。

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