« 2008年09月 | メイン | 2008年11月 »

2008年10月 アーカイブ

2008年10月03日

第303号『好奇心』

IMGP2458.jpg

【馬力】

「人気ケータイ小説、筆者は瀬戸内寂聴」このタイトルが目に入った。
日経新聞のコラム「文化往来」から引用する。

--------------------
「ぱーぷる」という筆名で、五月から四ヶ月間ケータイ小説サイト「野いちご」に投稿された「あしたの虹」という作品がある。
現在も公開されており、既に二十五万回以上閲覧されたこの作品の著書は瀬戸内寂聴。(中略)
瀬戸内は「ケータイ小説が文学をダメにするとかいろいろ言われるけれど、これだけ読まれるからには何かがある。
自分で書いてみなければわからないと思った」と執筆の動機を語る。
携帯端末での執筆はすぐ断念したが、若い世代のチェックで徹底的に「ケータイ文体」に手直しした。
「こんな単純でいいのなら、文章を選び抜いてきた今までの修行は何だったんだろう」とも考えたが、数々の作品を読み、自ら執筆したことで「この文体でしか表現できないものがあるなら無視できない」と思うようになった。
「千年前の源氏物語は今、そのままでは読めない。いろんな日本語ができても、文学原点はなくならない」。
八十六歳の好奇心による再発見である。
-------------------

凄い。
瀬戸内寂聴といえば、すでに功成り名を遂げた大作家である。
ケータイ小説、というだけで眉を寄せてしまいがちなジャンルであるが、垣根を作らず多くの読者に受け入れてもらうための文体を探し、手直しを惜しまない。
それだけではなく、閲覧回数二十五万回以上という成功を勝ち取るために、具体的に何をすれば良いのかを徹底的に研究し、実践している。

どうすればこんな凄い先達に近づくことができるのだろうかと自問自答した。
自分が出来ないと言わない限りは、やれないことも、出来ないこともない。
好奇心というエンジンをブンブン回して、躊躇なく前に進むことだ。

2008年10月09日

第304号『名称』

IMGP3549.jpg

【飾り】

いま、世界で権勢をふるってきた米国の老舗企業が次々と危機に至っている。
AIGは政府の管轄下に入り、GMは救済法でなんとか延命している。

AIGの正式名称は「アメリカン・インターナショナル・グループ」訳せば、「米国国際集団」か。
GMの正式名称は「ゼネラルモーターズ」、こちらは「総合自動車」。
ちなみに、IBM「インターナショナル・ビジネス・マシーンズ・ コーポレーション」は「国際産業機械」。
20世紀のはじめに創業し輝かしい歴史を刻んできたこれらの企業名は大仰である。
アメリカンドリームと世界制覇の夢がこうした名を冠せさせしめたのだろうか。

方や、いま元気の良い企業をみればなんとも軽快である。
「Google」は10乗の100乗の数を表すgoogolを変形させた造語。
「Yahoo!」はといえば、二人の開発者、デビッド・ファイロ(David Filo)とジェリー・ヤン(Jerry Yang)が自らを、ならず者(yahoo)だと思っているからこの名前を選んだのだと主張している。
そして、「Apple」は果物のアップル。
昨年、もともとの「Apple Computer Inc.」から、さらにシンプルに「Apple Inc.」と名称を変えている。

迷走する大人たちと遊び心に満ちた童たち。
時代の終わりと始まりが見え隠れしている。

----------お知らせ----------
企業ファンサイト2.0ともいえるサイトが、2つ続けてカットオーバーしました。
1つは株式会社ウテナ様、2008年10月8日発売の新商品「マジアボタニカ」のファンサイト「マジアボタニカ・ カフェ」そしてもう1つは生花販売、株式会社アベニューグループの「フラワーアベニュー」です。
ご高覧ください。

ご意見、ご感想をただければ幸甚です。

マジアボタニカ・カフェ マジアボタニカ・カフェ
http://www.magiabotanica.jp/cafe/

フラワーアベニュー フラワーアベニュー   
http://flower-avenue.jp/

2008年10月17日

第305号『「しないこと」をもつ』

IMGP3585.jpg

【天上に向かう】

「しないこと」をもつことで身を律する。
そんなことを思いついたのはファンサイトを立ち上げる時のことであった。
会社を始めるにあたり、知人から「事業計画書を作ると良い」とアドバイスを受けた。
事業計画書という言葉は知っていたが、具体的になにをどうすればよいのか分らない。
それでも、分らないなりに書いてみた。

・ 会社としての意義や社会的責任は
・ 仕事への取り組みは
・ 年間売上目標と達成方法は

書いてはみたものの、なんだかしっくりとこない。
腑にも落ちない。
理想とする目標を掲げ、それを達成するための道筋を描いてみる。
このことの大切さは十二分に理解できる。
しかし、なんだか他人事のように感じてしまった。

これからスタートする会社はわずかばかりの自己資金と友人からの借入金、そして中古のPCが一台あるだけ。
やれることも、できることも限られていた。
だったら、せめて、「やりたくないこと」「しないこと」をハッキリさせてみようと考えた。

・ いやな会社や、いやな人と仕事はしない
・ クライアントにへつらうことはしない
・ 無料でアドバイスすることはしない

そして、「しないこと」を裏返すと、やるべきことや、とるべき態度がスッキリと分った。

・ 仕事を通して尊敬できる関係を築くこと
・ スタッフやお客様と共に成長すること
・ 十分な利益を共有すること

「YES」と「NO」をはっきりさせる。
「すること」と「しないこと」をはっきりさせる。

つまり、身を律するための基準を持つことを決めたのだ。

2008年10月24日

第306号『ファンの聖地-1』

IMGP2514.jpg

【スタジアム】

「アメリカでクリスマスと同じくらい大切なイベントが明日あります。僕のオフィスに遊びに来ませんか?」M氏のオフィスはロスアンゼルスのダウンタウン、ピコにある。
誘われるまま翌日、彼のオフィスを訪ねた。
すでに数人が大型テレビの前に陣取っている。
そして、直径7〜80センチはありそうな巨大なピザとビールが用意され、なんだか皆ワクワクしながらその時を待っている。
間もなく、アメリカンフィットボール最大のイベント「スーパーボウル」のキックオフの笛が鳴ろうとしていた。

このイベントによる経済効果の大きさや、この日のためにだけ流すTVCMが毎年話題にもなるという。
そういえば、オフィスに来るまでの間、道行く車には応援するチームの旗が掲げられ、クラクションを威勢良く鳴らしていた。
スポーツバーには人集りができていたし、ホテルの部屋でつけていたTVには、どのチャンネルを回してもこの話題ばかりが目に付いた。
なるほど、全米が「スーパーボウル」で盛り上がっているなと、肌で感じた。

なぜ、これほどまでに凄まじく熱狂するのか。
興味が湧き、調べているうちにさらに凄い事実を知った。

「グリーンベイ・パッカーズ」。
人口わずか10万人の街、ウィスコンシン州グリーンベイをフランチャイズにしているNFL(ナショナルフットボールリーグ)所属のチーム。
1919年設立。
当初、創立者カーリー・ランボーが勤めていた地元の缶詰会社"Indian Packing Company" がスポンサーだった。
ニックネーム「パッカーズ」の由来は、その缶詰会社のためにつけられた。
しかし、すぐにこの会社はスポンサーではなくなり、資金難にいたった。
そして生まれたアイデア、それは「株式を発行することによってファン所有のチームにする」 というものだった。
いまや、NFLばかりではなく、全米4大プロスポーツ唯一の「市民が所有するチーム」がこうして誕生した。

NFL(ナショナルフットボールリーグ)36のチーム中、スーパーボウル出場最多という古豪である。

「グリーンベイ・パッカーズ」は大都市の巨大な資本を持つチームに立ち向かう小さな勇者のようにも見える。

視聴率もグッズ売り上でも、常にトップを争い、本拠地ランボーフィールドは44シーズン連続でチケットが完売。
シーズンチケットのリストには65,000人以上が順番待ちをしている。
現在、シーズンチケット入手までの待ち時間は、およそ35年。

1923年に非営利法人となり、理事会によって運営され理事会は、地元の財界人を中心に、元パッカーズ選手、判事、大学の学長など、地元の人々が名を連ねる。
球団社長を除き、理事全員無給。
1923年、1935年、1950年、1997年、1998年に株が発行され、合計4,749,925株、 111,921人が所有している。
この株を売買することは禁止されており、配当金もなし。

毎年夏にグリーンベイで開催される株主総会には多くの株主が集まる。
ちなみに2006年には2万人以上が集まった。
ただ「グリーンベイ・パッカーズの株主=ファンである」ことを人々は楽しんでいる。

真のファンの姿を観に、この聖地を尋ねてみたい。

2008年10月30日

第307号『ファンの聖地-2』

R0010007.jpg

【待ち人】

ニッチ【Niche】とは直訳すれば「隙間」や「くぼみ」のことであるが、もともとは生物学で生態ごとに生きて行くうえで、自分にとって優位なポジションを表す意である。
例えば恐竜など爬虫類が栄えていた頃、哺乳類はネズミのような姿で、活動も夜行など目立たず隙間を縫うようにして生きていた。
哺乳類にとって、それがその時の生きて行くうえで優位な位置だったのだ。

先日、友人のA氏からB級グルメの聖地で「食べ歩き」をしないかと、誘いを受けた。
そんな場所が存在するのか、少しワクワクした。
しかして、平日の夕方5時、聖地の入口、京成立石駅に降り立った。
駅の階段を降りるとすぐ目の前に古いアーケードのある商店街が広がる。
アーケードの一角にあるホルモン焼き「宇ち多“」からスタート。

店の前にはすでに数人が順番待ちをしていたが、あまり待つことなく暖簾をくぐり店内に入れた。
ほぼ満席だったがすんなりと細長いテーブルに付くことができた。
しばらく店内の様子を窺う。

「ツル、テッポウ、コブクロ、シロ、ガツ、ハツ、カシラ、焼酎の梅割」とお客が注文する。
「お客さん、梅割もう3杯目だからこれで止めときな!」

お客と店のおやじとの注文の遣り取りにもリズムとルールある。
僕もこの「梅割」を飲んでみた。
3杯飲んだら倒れる、聞きしに勝る効き目である。

30分足らずで、次の店「ミツワ」へ移動。
ここでは、刺し盛り三種と蒲焼きがお目当てである。
どれもこれも、安い旨い。
もっと!と思いながらも後ろ髪引かれつつ、3軒目、立ち食い寿司屋「栄寿司」に入る。
店内は女性客が多い。
カウンターを挟んで職人に次々に注文をしている。
A氏お勧めの、つぶきも、白子、ぼたんえび、とこぶし、穴子、煮蛤の中から穴子を口に放り込んだ。
しゃりと穴子がとろけ、混ざり合う。
このままもう少し食べたい、が、気持ちを押さえ次の店へ移る。

今度は、京成線の踏切を渉り、駅の反対側へと向かう。
駅裏の路地に入り込むと蛍光灯の明かりに照らされた「のんべ横町」の看板が現れた。
まさしく「昭和」の世界への入口をくぐり抜ける。

40人ほどが座れるカウンターのみの店「江戸っ子」は煮込みとホルモン焼きが売りだ。
ここでは、白みそ仕立ての煮込みを食した。
確かにその通り、納得いく味である。
もう1杯を我慢し、焼き鳥と焼きそばが旨い家庭料理の店「三平」に移る。
早速、焼きそばと焼き鳥で日本酒を飲む。
そして最後の店、京風おでんの店、その名も「おでんや」。
おでんの旨さと、イモ焼酎の品揃えに嬉しくなった。

店を出て、時計を見れば時間はまだ10時を少し回ったばかり。
5時間におよぶ京成立石の食べ歩きの旅は終わった。
メンバー5人と、この日の清算をする。
締めて一人、5000円と少々。

どの店も共通していたのは、安くて旨くて、常連客が多い。
そして「過ぎたるは及ばざるがごとし」と、飲み過ぎを禁める店主がいた。
明日も来てほしいから、「今日はここらで止めときな」と間の手を入れる。
ほっこりとした温かさがある。
これが常連客=ファンが付く理由だ。

なるほど、ニッチとは居心地が良い場所のことであると納得した。

ファンサイト