2008年11月13日

2008/11/13
第309号『共感(empathy)』

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【記憶の中の光】

例えば、食べたことのないものや、訪れた場所の印象を人に伝える時、どう言えば良いのだろうか。
「上手く言えないのだが」「筆舌につくしがたい」「言葉にできないが」こうした言い回しもある。
しかし、これでは何も伝わらない。
いや、むしろ他者との間に溝を作り、情報を共有することを拒んでいるともとれる。

では、どうするか。
僕はしばしば記憶の中にある、「共感」を利用する。

「共感(empathy)」とは、他者の感覚、考え、体験などを、気が付いたり、感じとったり、擬似的に追体験することで生まれる。
その時、記憶は何かを思い出すためだけではなく、目の前に現れた様々な事柄を、理解するための道具として使われる。
なぜなら、人は自らが保有している記憶で肉付けしながら、与えれた情報を解釈しているからだ。
ゆえに、こちらから何か情報を伝える時には、その情報をより分かりやすく、豊かなものにするためにも、受け手の頭の中にすでにある記憶を呼び覚まさなければならない。

世界は言葉に出来ないことで溢れている。
それでも、できるだけそれに近づき、そして、その中にある事柄をすくいあげてみたい。
たとえ、それが稚拙な言葉であったとしても懸命に探す。
少なくとも、その努力を惜しまないようにと肝に銘じている。

僕はモネの絵が好きだ。
MOMAで、ブリヂストン美術館で何度となく観た。
でも、その美しさが何に由来するのかわからなかった。

ある時ふと思った。
晩年、自宅の池に浮かぶ「睡蓮」を描き続けたというモネについて。
絵の中にあるのは、移ろい行くものの、その一瞬を記憶に留めてみたいという意志と、永遠という時間を手に入れたいと願う画家の想いではなかったか、と。

僕は、老いることの意味と、モネについてほんの少しだけ語れるような気がした。


2008年11月06日

2008/11/ 6
第308号『出し惜しみ無しの法則』

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【垂れ込めた雲】

青森県つがる市は津軽平野のほぼ真ん中に位置する本州北端の市である。
木造町、柏村、森田村、車力村、稲垣村と1町4村の合併、いわゆる平成の大合併によって誕生した。
今回、つがる市商工会主催の「経営革新塾」という勉強会の講師としてお声掛けいただいた。

講義は午後6時から。
水曜日、午前9時、アトリエのある浜町から東京駅へ。
東京駅から9時56分発、東北新幹線「はやて13号」で八戸駅まで。
ここから弘前行き「特急つがる13号」に乗り換える。
弘前駅に到着するころには、どんよりとした雨雲が空を覆っていた。
弘前駅で、目的地、五能線木造駅行きへの乗り継ぎを待つ。
待つこと1時間、3両連結のディーゼル車、「しらがみ6号」に乗車する。
車窓からは、リンゴの木々と垂れ込めた雲の先に泰然と山裾をひろげる岩木山が見える。

16時54分、8時間をかけてようやく木造駅に到着した。
駅から車で、シャッターの降りた商店街を行き過ぎ、会場へ移動。
「この街も人口が減り、老人ばかりが目に付くようになりました」と、商工会のご担当の方から話しを伺う。

5時半を過ぎたころから、受講される方々が次々と会場に集まってきた。
夕方、仕事を終えてからの参加であるが、ほぼ会場は満席。

この日のテーマは「中小企業のウェブの戦略と活用法」。

感心の度合いの高いことが、参加者ひとり一人から伝わる。
なんとか、自分たちが生まれ育ったこの地で生きていくためのヒントになるものがないか、と。

受講生の方々に何をどんなカタチでお伝えするかと考えた。
まずは、したくないことを考えてみた。
知ったかぶりで要領の良い講義にならないようにと、心がけた。

僕にできることは、ただ1つ。
「出し惜しみ無しの法則」に従うことだ。

「出せば,出すほど次々とアイディアが出てくる、そして、やりたいことがどんどん湧いてくる」これが「出し惜しみ無しの法則」だ。
だから、出し惜しみをせず、いままで経験したことをわかり易くドンドン発露することである。
そして、これが、垂れ込めた雲のような気分を吹き飛ばす方法でもあるのだ。

2008年10月30日

2008/10/30
第307号『ファンの聖地-2』

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【待ち人】

ニッチ【Niche】とは直訳すれば「隙間」や「くぼみ」のことであるが、もともとは生物学で生態ごとに生きて行くうえで、自分にとって優位なポジションを表す意である。
例えば恐竜など爬虫類が栄えていた頃、哺乳類はネズミのような姿で、活動も夜行など目立たず隙間を縫うようにして生きていた。
哺乳類にとって、それがその時の生きて行くうえで優位な位置だったのだ。

先日、友人のA氏からB級グルメの聖地で「食べ歩き」をしないかと、誘いを受けた。
そんな場所が存在するのか、少しワクワクした。
しかして、平日の夕方5時、聖地の入口、京成立石駅に降り立った。
駅の階段を降りるとすぐ目の前に古いアーケードのある商店街が広がる。
アーケードの一角にあるホルモン焼き「宇ち多“」からスタート。

店の前にはすでに数人が順番待ちをしていたが、あまり待つことなく暖簾をくぐり店内に入れた。
ほぼ満席だったがすんなりと細長いテーブルに付くことができた。
しばらく店内の様子を窺う。

「ツル、テッポウ、コブクロ、シロ、ガツ、ハツ、カシラ、焼酎の梅割」とお客が注文する。
「お客さん、梅割もう3杯目だからこれで止めときな!」

お客と店のおやじとの注文の遣り取りにもリズムとルールある。
僕もこの「梅割」を飲んでみた。
3杯飲んだら倒れる、聞きしに勝る効き目である。

30分足らずで、次の店「ミツワ」へ移動。
ここでは、刺し盛り三種と蒲焼きがお目当てである。
どれもこれも、安い旨い。
もっと!と思いながらも後ろ髪引かれつつ、3軒目、立ち食い寿司屋「栄寿司」に入る。
店内は女性客が多い。
カウンターを挟んで職人に次々に注文をしている。
A氏お勧めの、つぶきも、白子、ぼたんえび、とこぶし、穴子、煮蛤の中から穴子を口に放り込んだ。
しゃりと穴子がとろけ、混ざり合う。
このままもう少し食べたい、が、気持ちを押さえ次の店へ移る。

今度は、京成線の踏切を渉り、駅の反対側へと向かう。
駅裏の路地に入り込むと蛍光灯の明かりに照らされた「のんべ横町」の看板が現れた。
まさしく「昭和」の世界への入口をくぐり抜ける。

40人ほどが座れるカウンターのみの店「江戸っ子」は煮込みとホルモン焼きが売りだ。
ここでは、白みそ仕立ての煮込みを食した。
確かにその通り、納得いく味である。
もう1杯を我慢し、焼き鳥と焼きそばが旨い家庭料理の店「三平」に移る。
早速、焼きそばと焼き鳥で日本酒を飲む。
そして最後の店、京風おでんの店、その名も「おでんや」。
おでんの旨さと、イモ焼酎の品揃えに嬉しくなった。

店を出て、時計を見れば時間はまだ10時を少し回ったばかり。
5時間におよぶ京成立石の食べ歩きの旅は終わった。
メンバー5人と、この日の清算をする。
締めて一人、5000円と少々。

どの店も共通していたのは、安くて旨くて、常連客が多い。
そして「過ぎたるは及ばざるがごとし」と、飲み過ぎを禁める店主がいた。
明日も来てほしいから、「今日はここらで止めときな」と間の手を入れる。
ほっこりとした温かさがある。
これが常連客=ファンが付く理由だ。

なるほど、ニッチとは居心地が良い場所のことであると納得した。

2008年10月24日

2008/10/24
第306号『ファンの聖地-1』

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【スタジアム】

「アメリカでクリスマスと同じくらい大切なイベントが明日あります。僕のオフィスに遊びに来ませんか?」M氏のオフィスはロスアンゼルスのダウンタウン、ピコにある。
誘われるまま翌日、彼のオフィスを訪ねた。
すでに数人が大型テレビの前に陣取っている。
そして、直径7〜80センチはありそうな巨大なピザとビールが用意され、なんだか皆ワクワクしながらその時を待っている。
間もなく、アメリカンフィットボール最大のイベント「スーパーボウル」のキックオフの笛が鳴ろうとしていた。

このイベントによる経済効果の大きさや、この日のためにだけ流すTVCMが毎年話題にもなるという。
そういえば、オフィスに来るまでの間、道行く車には応援するチームの旗が掲げられ、クラクションを威勢良く鳴らしていた。
スポーツバーには人集りができていたし、ホテルの部屋でつけていたTVには、どのチャンネルを回してもこの話題ばかりが目に付いた。
なるほど、全米が「スーパーボウル」で盛り上がっているなと、肌で感じた。

なぜ、これほどまでに凄まじく熱狂するのか。
興味が湧き、調べているうちにさらに凄い事実を知った。

「グリーンベイ・パッカーズ」。
人口わずか10万人の街、ウィスコンシン州グリーンベイをフランチャイズにしているNFL(ナショナルフットボールリーグ)所属のチーム。
1919年設立。
当初、創立者カーリー・ランボーが勤めていた地元の缶詰会社"Indian Packing Company" がスポンサーだった。
ニックネーム「パッカーズ」の由来は、その缶詰会社のためにつけられた。
しかし、すぐにこの会社はスポンサーではなくなり、資金難にいたった。
そして生まれたアイデア、それは「株式を発行することによってファン所有のチームにする」 というものだった。
いまや、NFLばかりではなく、全米4大プロスポーツ唯一の「市民が所有するチーム」がこうして誕生した。

NFL(ナショナルフットボールリーグ)36のチーム中、スーパーボウル出場最多という古豪である。

「グリーンベイ・パッカーズ」は大都市の巨大な資本を持つチームに立ち向かう小さな勇者のようにも見える。

視聴率もグッズ売り上でも、常にトップを争い、本拠地ランボーフィールドは44シーズン連続でチケットが完売。
シーズンチケットのリストには65,000人以上が順番待ちをしている。
現在、シーズンチケット入手までの待ち時間は、およそ35年。

1923年に非営利法人となり、理事会によって運営され理事会は、地元の財界人を中心に、元パッカーズ選手、判事、大学の学長など、地元の人々が名を連ねる。
球団社長を除き、理事全員無給。
1923年、1935年、1950年、1997年、1998年に株が発行され、合計4,749,925株、 111,921人が所有している。
この株を売買することは禁止されており、配当金もなし。

毎年夏にグリーンベイで開催される株主総会には多くの株主が集まる。
ちなみに2006年には2万人以上が集まった。
ただ「グリーンベイ・パッカーズの株主=ファンである」ことを人々は楽しんでいる。

真のファンの姿を観に、この聖地を尋ねてみたい。

2008年10月17日

2008/10/17
第305号『「しないこと」をもつ』

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【天上に向かう】

「しないこと」をもつことで身を律する。
そんなことを思いついたのはファンサイトを立ち上げる時のことであった。
会社を始めるにあたり、知人から「事業計画書を作ると良い」とアドバイスを受けた。
事業計画書という言葉は知っていたが、具体的になにをどうすればよいのか分らない。
それでも、分らないなりに書いてみた。

・ 会社としての意義や社会的責任は
・ 仕事への取り組みは
・ 年間売上目標と達成方法は

書いてはみたものの、なんだかしっくりとこない。
腑にも落ちない。
理想とする目標を掲げ、それを達成するための道筋を描いてみる。
このことの大切さは十二分に理解できる。
しかし、なんだか他人事のように感じてしまった。

これからスタートする会社はわずかばかりの自己資金と友人からの借入金、そして中古のPCが一台あるだけ。
やれることも、できることも限られていた。
だったら、せめて、「やりたくないこと」「しないこと」をハッキリさせてみようと考えた。

・ いやな会社や、いやな人と仕事はしない
・ クライアントにへつらうことはしない
・ 無料でアドバイスすることはしない

そして、「しないこと」を裏返すと、やるべきことや、とるべき態度がスッキリと分った。

・ 仕事を通して尊敬できる関係を築くこと
・ スタッフやお客様と共に成長すること
・ 十分な利益を共有すること

「YES」と「NO」をはっきりさせる。
「すること」と「しないこと」をはっきりさせる。

つまり、身を律するための基準を持つことを決めたのだ。

2008年10月09日

2008/10/ 9
第304号『名称』

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【飾り】

いま、世界で権勢をふるってきた米国の老舗企業が次々と危機に至っている。
AIGは政府の管轄下に入り、GMは救済法でなんとか延命している。

AIGの正式名称は「アメリカン・インターナショナル・グループ」訳せば、「米国国際集団」か。
GMの正式名称は「ゼネラルモーターズ」、こちらは「総合自動車」。
ちなみに、IBM「インターナショナル・ビジネス・マシーンズ・ コーポレーション」は「国際産業機械」。
20世紀のはじめに創業し輝かしい歴史を刻んできたこれらの企業名は大仰である。
アメリカンドリームと世界制覇の夢がこうした名を冠せさせしめたのだろうか。

方や、いま元気の良い企業をみればなんとも軽快である。
「Google」は10乗の100乗の数を表すgoogolを変形させた造語。
「Yahoo!」はといえば、二人の開発者、デビッド・ファイロ(David Filo)とジェリー・ヤン(Jerry Yang)が自らを、ならず者(yahoo)だと思っているからこの名前を選んだのだと主張している。
そして、「Apple」は果物のアップル。
昨年、もともとの「Apple Computer Inc.」から、さらにシンプルに「Apple Inc.」と名称を変えている。

迷走する大人たちと遊び心に満ちた童たち。
時代の終わりと始まりが見え隠れしている。

----------お知らせ----------
企業ファンサイト2.0ともいえるサイトが、2つ続けてカットオーバーしました。
1つは株式会社ウテナ様、2008年10月8日発売の新商品「マジアボタニカ」のファンサイト「マジアボタニカ・ カフェ」そしてもう1つは生花販売、株式会社アベニューグループの「フラワーアベニュー」です。
ご高覧ください。

ご意見、ご感想をただければ幸甚です。

マジアボタニカ・カフェ マジアボタニカ・カフェ
http://www.magiabotanica.jp/cafe/

フラワーアベニュー フラワーアベニュー   
http://flower-avenue.jp/

2008年10月03日

2008/10/ 3
第303号『好奇心』

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【馬力】

「人気ケータイ小説、筆者は瀬戸内寂聴」このタイトルが目に入った。
日経新聞のコラム「文化往来」から引用する。

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「ぱーぷる」という筆名で、五月から四ヶ月間ケータイ小説サイト「野いちご」に投稿された「あしたの虹」という作品がある。
現在も公開されており、既に二十五万回以上閲覧されたこの作品の著書は瀬戸内寂聴。(中略)
瀬戸内は「ケータイ小説が文学をダメにするとかいろいろ言われるけれど、これだけ読まれるからには何かがある。
自分で書いてみなければわからないと思った」と執筆の動機を語る。
携帯端末での執筆はすぐ断念したが、若い世代のチェックで徹底的に「ケータイ文体」に手直しした。
「こんな単純でいいのなら、文章を選び抜いてきた今までの修行は何だったんだろう」とも考えたが、数々の作品を読み、自ら執筆したことで「この文体でしか表現できないものがあるなら無視できない」と思うようになった。
「千年前の源氏物語は今、そのままでは読めない。いろんな日本語ができても、文学原点はなくならない」。
八十六歳の好奇心による再発見である。
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凄い。
瀬戸内寂聴といえば、すでに功成り名を遂げた大作家である。
ケータイ小説、というだけで眉を寄せてしまいがちなジャンルであるが、垣根を作らず多くの読者に受け入れてもらうための文体を探し、手直しを惜しまない。
それだけではなく、閲覧回数二十五万回以上という成功を勝ち取るために、具体的に何をすれば良いのかを徹底的に研究し、実践している。

どうすればこんな凄い先達に近づくことができるのだろうかと自問自答した。
自分が出来ないと言わない限りは、やれないことも、出来ないこともない。
好奇心というエンジンをブンブン回して、躊躇なく前に進むことだ。

2008年09月25日

2008/9/25
第302号『信者』

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【貝殻のタペストリー】

今年、ライブで聴いたアーティストたち。
ポリス・チープトリック・忌野清志郎・シンディローパー。
それぞれに素晴らしい舞台を味わうことができた。

コンサートに行く度に思うことがある。
彼らは、どうしてこれだけの人を集めることができるのだろうか。

集まるファンもファッション、年代、ノリ、それぞれに特徴があり、雰囲気も違う。
それほど大々的に告知しているわけでもないのに、わずか数人のメンバーで武道館を、東京ドームをファンで埋め尽くす。

「言う」に人(にんべん)が付くと「信じる」になる。
「信じる」に者が付くと「儲かる」になる。
つまり、音楽であれ、宗教であれ、ビジネスであれ基本は信ずる者が集まることにある。

勿論、自分だけの利益だけを考えている者の回りに、人が集まるはずもない。

ファンとは何か。
1つの言葉から曲が生まれ、その音が共振して輪が広がる。
そして、人々のこころが共振し、共感に変わるときファンが誕生する。

喉頭癌を克服して2月10日ステージに立った清志郎が、今度は腸骨への転移が見つかった。
この夏、予定していたすべてのライブ活動を中止した。
さぞかし無念と思いきや、「このくらいのことは覚悟してたんで、ぜんぜん凹んでないから」と、本人は淡々としたメッセージを寄せている。
2年前、闘病生活を「新しいブルースを楽しむように」と言っていた。
そして、こんどは「ブルースはまだまだ続いている」と。

清志郎のこの前向きな姿勢に共感する。
そして、まぎれもなく僕はかれの信者である。


2008年09月18日

2008/9/18
第301号『突破力』

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【蔦の絡まるハウス】

船井総研でIT企業のコンサルタントをしている、友人の長島淳治さんが日経BP社から「IT一番戦略の実践と理論」を上梓された。

彼との交流は2年前の5月、一通のメールから始まった。
06年4月に出版したばかりの僕の著作「企業ファンサイト」を読み、会いたいのとメールをいただいた。
読者の方からいただいた最初のメールでもあった。
明るく率直な発言と、柔らかな言葉のなかに鋭い観察眼を併せ持つ若者との印象を受けた。
そして別れ際、「僕も数年後に本を書いて出版します。」
と、きっぱりと言ったことがとても印象的だった。
はたして、きっぱりと言い放ったそのことを見事に実現した。

その長島さんから、最近もっとも感銘したという本を紹介された。
山口絵里子著「裸でもいきる」である。

山口さんのプロフィールを紹介する。
1981年埼玉県生まれ。小学校時代イジメにあい、その反動で中学時代非行に走る。その後、強くなりたいと高校の「男子柔道部」に自ら飛び込み、女子柔道で日本のトップクラスに。偏差値40から受験勉強3ヶ月で慶応大学に合格。大学のインターン時代、ワシントン国際機関で途上国援助の矛盾を感じ、アジア最貧国「バングラデシュ」に渡り日本人初の大学院生になる。必要なのは施しではなく先進国との対等な経済活動という理念のもと23歳で起業を決意。ジュート(麻)を使った高品質バッグを現地で生産し輸入販売する「株式会社マザーハウス」を設立。あらゆる苦難を乗り越えビジネスを軌道に乗せた彼女の生き方やビジネス理念は、多くの学生から若い社会人に感動を与えており、社長業の傍ら講演で飛びまわる。「フジサンケイ女性起業家支援プロジェクト2006」最優秀賞受賞。

このプロフィール通り、まるでジェットコースターのようにスリリングな内容で、一気に読み終えた。

そして、僕が常々敬意と賞賛をもって接している人たちに共通するものがあることに気が付い。
それは、常識では無理だと思われる問題や、困難という壁を、愚直に突破していく姿勢だ。

例えば、大手金融コンサル会社を辞し、ストリートバスケやストリートダンスを組織するK氏。
地方から上京し、販売員からはじめ、いまや圧倒的なブランド力をもつファッションデザイナーのS氏。
政府系バンクを辞し、中小企業支援のコンサルをやりながら自らも数店のショップ経営を展開するM氏。

彼らから一様に出た言葉がある。
「やってみなきゃわからないじゃない!」
なるほど、突破力とは自分を信じる力のことだと思った。

2008年09月11日

2008/9/11
第300号『10000時間』

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【数】

福岡伸一氏は『生物と無生物のあいだ』でサントリー学芸賞に輝いた気鋭の生物学者である。
骨子の野太さとは似つかわしくない、流麗で且つ、リズム感のある文体で思わず引き込まれた。
その福岡氏のコラムを8月21日付け日経新聞夕刊で、読んだ。
以下、コラムからの引用である。

「こんな調査がある。スポーツ、芸術、技能、どんな分野でもよい。
圧倒的な力量を誇示するプロフェッショナルというものが存在する世界がある。
そんじょそこらのアマチュアなどまったくよせつけないプロフェッショナルたち。
そのような人たちがいかにして形成されたか。
それを調査したものである。
(中略)
プロフェッショナルたちの多くは皆、ある特殊な時間を共有しているのである。
10000時間。
いずれの世界でも彼ら彼女らは、幼少時を起点として少なくとも10000時間、例外なくそのことだけに集中し専心し、たゆまぬ努力をしているのだ。
10000時間といえば、1日3時間練習レッスンを受けるとして、1年に1000時間、それを10年にわたってやすまず継続するということである。
その上に初めてプロフェッショナルが成り立つ。
DNAの中には、ピアニストの遺伝子も将棋の遺伝子も存在しない。
DNAには、人を生かすための仕組みが書かれてはいるが、いかに活かすかについては一切記載はない。」

拳拳服膺。

量は質を凌駕する。
蓋し,腑に落ちた。
はたして、自分はどうか。

『ファンサイト通信』を書き始めて6年6ヶ月。
そして300号、まだまだ道半ばである。

執筆者のプロフィール

ファンサイト有限会社
代表取締役
川村隆一

1952年1月生まれ。
日本大学芸術学部卒業。
日活株式会社、日本工学院専門学校映像デザイン美術科(現)グラフィックデザイン科専任教師、株式会社Cカンパニー、株式会社ナガセ等を経て、ファンサイト有限会社を設立。
資生堂・イオングループ・キリンビール・マツダ等の企業コミュニケーション/広報活動のためのディレクションとプランニングを手がけてきた。

【書籍】「企業ファンサイト入門」日刊工業新聞社刊 2006年

【賞】経団連海外広報センター最優秀デザイン賞(横浜銀行アニュアルレポート)

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