2010年03月12日

2010/3/12
広告 2.0

022.gif

SocialMedia.com の Seth Glostein が Ads 2.0 というビジョン(Ads 2.0: The Next Evolution of Online Advertising)を発表。ソーシャルメディアが一般に普及するにつれて、広告にも自ずとソーシャルメディア的なものが期待されるようになる、という背景を想定して構想されたものです。同じような対比は Web 2.0 の時にもありましたが、もちろんこれはそのオマージュでもあります。

Twitterを意識しすぎではないかという項目もあり、また最後の「広告」から「コンテンツ」というのは大胆ですね。広告がなくなってしまっては2.0が成り立たないのではと思ったり。

個人的におもしろく思ったのは「ページから人」、「割り込みから会話」という項目でした。ソーシャルメディアでのコミュニケーションでは「シェア(共有)する」という発想が重要なので、そうした項目も欲しかったなあと思ったり。たとえば「奪取からシェア」とか、もう少しマイルドに「獲得からシェア」とか。また、マス媒体が効かなくなっていると言われますが、そこのところを汲んで「マスからパーソナル」などもあって良さそうです。

こんな風に思いつくままに言葉に出していくと、ちょっとしたブレストになります。SNS 1.0と2.0とか、新聞1.0と2.0などなど、番号を付けるだけの手軽さで利用できます。「2.0」という概念の価値は、アイデアを刺激するフレームワークとして利用することにあるのかもしれません。

Ads 1.0 vs. Ads 2.0
Ads 1.0 Ads2.0

やらせ(fake)

本物(real)

ページ(pages)

人(people)

提言(statements)

問い(questions)

静止画像(static images)

動的データ(dynamic data)

一般的な(generic)

個別の(personalized)

Google AdSence

Facebook Connect

バナー(banners)

アップデート(updates)

キーワード(keywords)

ツイート(tweets)

クリック率(CTR)

バイラリティ(virality)

クッキー(cookies)

アイデンティティ(identity)

行動ターゲティング(behavioral targeting)

明確なオプトイン(explicitly optin-in)

プロフェッショナルな場(professional spots)

アマチュアの動画(amature videos)

メガバイト級のマルチメディア(megabytes of multimedia)

140文字のテキスト(140 characters of text)

割り込み(interrupt)

会話(converse)

価値の絞り込み(detract)

価値の付加(add value)

広告(advertising)

コンテンツ(content)

2010年02月19日

2010/2/19
新しいBuzzの登場。その違いは?

021.png

先週リリースされたGoogle Buzzで、Googleは出遅れていたソーシャルネットワーク市場へ乗り込んできました。トラフィックの主流が検索エンジンからソーシャルネットワークへと移っています。たとえば、ユーザーが検索にかける時間よりも、目的先のサイトで過ごす時間が圧倒的に長いということからも、検索の地位が揺らいでいると想像できるでしょう。しかも、検索結果より身近な知り合いの意見の方が重視されるのは周知のとおりです。

Google Buzzとは、平たく言えばTwitterのようなサービスです。Twitterとは機能面では、140文字という文字制限がないことや、写真や動画などが付けられることなどの違いがありますが、最も大きな違いは、Twitterのつぶやきがタイムライン(TimeLine, TL)という話題の流れであるのに対して、Buzzは掲示板などで見るような「スレッド」形式であることでしょう。スレッドとは、あるトピックの下にコメントが連なっていくものです。したがってBuzzの醍醐味は「リアルタイムでコメントチェーンがぶぁーっと膨れ上がる状況を見ること」にあるとも言えます。

しかし、そのBuzzの醍醐味も、興味あるスレッドの存在を知らなければそこに参加できません。タイムラインを眺めておもしろそうなものを拾い上げるというTwitter的なたのしみは、今のところBuzzにはなさそうです。

すでにGoogle Buzzを半年使ったGoogleの共同設立者Sergey Brinによると、Googleはバズのノイズを低減するためにレコメンデーションシステムに取り組んでいるようです。スレッドを発見するための検索をシステムに肩代わりさせようとしているようにも思えますが、それよりも、これはスレッドに集中できる環境を作ることが目的ではないかと思います。やはり、スレッドとタイムラインの違いという点にGoogle BuzzとTwitterの大きな差別がありそうです。

Googleが食い込もうとしているソーシャルネットワークにはFacebookという巨人がいます。ニュースメディアは早々に、Facebookは磐石で、Buzzには新味がないと結論づけています。また、ソーシャルネットワーク市場はすでに成熟しており、スイッチングコストがかかるためにBuzzは苦戦するとも見られています。Sergey Brinは「いろんな計画よりも、Buzzがこれからどう使われていくかが重要だ。」と言っていますが、彼らの実験にユーザーが気前よく付き合ってくれるのかどうか。今のところアーリー・アダプターの反応に好意的なものは少ないように感じます。

2010年01月29日

2010/1/29
Ustream

020mahlo.png

動画共有サービスのYouTubeは皆さんよくご存じだと思いますが、ライブで動画を配信できるサービスにUstream(ユーストリーム、USTなどと略される)があります。ネットワーク接続さえあれば、PC(ブラウザ)とWebカメラ(PCに接続する簡易なCCDカメラ)だけで生放送が配信できてしまうという手軽なサービスです。配信した動画はUSTに保存されるので、リアルタイムで見逃したコンテンツを後から観ることもできます。

技術系のユーザーグループでは、勉強会や講演の様子を中継するのによく使われていて、その場に参加できないイベントを中継で観たり、または見逃した講演やプレゼンなどを後でチェックしたりと、結構便利に活用できます。また、USTと相性の良いのがTwitterで、たとえば中継を見ながらイベントのハッシュタグを使ってツイートすることでそのイベントに参加することができます。

もっと身近なところでは、USTによる音楽ライブやトークショーなどもかなり盛んになっています。たとえば、人が決断するエピソードを "ダダ漏れ(生中継)" する「ケツダンポトフ」は、昨年あの「仕分け」をUSTで生放送して話題になりました(リンク)。

また、昨日のApple iPadの発表でもUSTでの中継が盛り上がりました。会場から中継をしていたコンテンツ(http://www.ustream.tv/leolaporte )もあり、10万件を超えるビューが集まったとか。

さて、そんなちょっとおもしろいUSTですが、昨年末に携帯から動画中継ができるアプリのiPhone版(Ustream Live Broadcaster)が登場して話題になっています。3GS回線(第3世代携帯電話網)も使えるので、思い立ったらすぐに生中継ができてしまう。この手軽さは驚くべきです。この先、まだまだ予想外のUST活用法が現れそうです。

2010年01月15日

2010/1/15
コンソリデーション

019.gif

遅ればせながら(^^;)、今年もよろしくお願いいたします。

先週末に米国で開催されたInternational Consumer Electronics Show(CES)公式サイト)で新型家電のニュースで賑わいました。Tablet(タブレット)関連やeReader(電子ブックリーダー、eリーダー)の端末がたくさん出展され、メディアの注目が集まりました。

タブレットとはタブレット型PCであって、電子書籍に特化したeリーダーとは違うのですが、読書環境またはコンテンツの閲覧環境という点では、同じジャンルに分類してよいでしょう。そんなeリーダー的な視点から、CESで展示された端末の一覧を見るなら、Open Publishing Labの下記のリンクがおすすめです。

米国内に比べて目立った動きに乏しかった日本国内でも、AmazonのKindle(キンドル)などeリーダー端末の動きに押されて「電子書籍化へ出版社が大同団結(朝日新聞1/13)」するそうです。しかし記事からは、端末と電子コンテンツばかりに注目しているように受け取れます。団結によってとりあえずコンテンツ/著者を囲い込んでしまおうというレガシーな発想が痛々しくも思えます。

CESで展示された端末を一覧してみると、現在eリーダーと呼ばれている端末は完成形ではないことが容易に想像できるでしょう。おそらく、単機能のeリーダーと多機能のタブレットの間で、端末は進化/変化していくことが予想されます。短期的には、そうした端末の良し悪しとその価格がポイントになるでしょう。しかし、長期的には端末の背後にあるサービスこそが重要になるでしょう。大同団結のニュースからは、そうした長期的なビジョンはうかがえません。

電子書籍から視野を広げて見ると、タブレットやeリーダーの他にも、携帯電話やスマートフォンなどさまざまな端末が現れて、混在しています。こうした状況も、端末がどの/どんなサービスと結びつくかによって整理統合されていくだろうと思っています。

2009年12月25日

2009/12/25
原稿を書くツール

018anime.gif

Wikipediaなどで有名な、共同で執筆するためのツール「Wiki(ウィキ)」には、一般にWiki記法と呼ばれる簡易なタグ付けのための方法が用意されています。タグは「開き」と「閉じ」がセットになって機能するので、忘れないように閉じタグを入れていくのは結構たいへんです(今時は手書きでする作業ではないでしょうが^^)。Wiki記法を使うと、決められたかんたんな記号を原稿中に入れておくだけで、Wikiエンジンがそれを変換して表示してくれます。見出しや太字などの強調、表組み、URLのリンクなど、一般的なドキュメントに必要な指定がそろっています。

また、このWiki記法と同じアイデアで、簡易な記号/タグ付きのテキストをHTMLやXMLその他のフォーマットに変換してくれるツールがいくつかあります。それらの記法は、たいていはWiki記法とよく似ていて、ほとんど「習得する」ことの必要がないほど単純なもので、手軽に利用できます。たとえばMarkdownは、ウェブ上で日本語の情報が見つかりやすく、日本語の利用者も多そうです(有志によるマニュアルの日本語訳もあります)。

さて、私の場合は、今年の5月ごろからこちらで文章を書かせていただくことになった際に、最終的な原稿をHTMLで用意しようと思い、Asciidocというツールを使って、原稿を整形(HTML化)しています。AsciidocはDocbookというXMLフォーマットに対応しているので、Docbook経由でPDFや電子書籍のフォーマットであるEPUBも作成できるというのが採用の理由でした。

こうした整形ツールのメリットは、共同での執筆や、大量のテキストを処理することで発揮されます。Wikipediaはその良い例です。もちろんこうしたメリットは、個人や少人数で文章を作成する際にも得られるでしょう。また、Wiki記法などの簡易な記号/タグは、文書の構造を定義するというHTMLの思想を汲んでいるので、構成のしっかりした文章を書くようになる、という副作用もあります(^^)。

追伸: 前回まで4回にわたって掲載した「Web Squared(Webの2乗)」の訳文を下記でご覧いただけます。あくまでも私が個人的に訳出したもので、公式なものではありません。また、原文の解釈や訳文の誤りや訳文へのアドバイスなどがありましたら、ぜひご指摘ください。

2009年12月11日

2009/12/11
Web Squared(ウェブの2乗)その4

014mahalo.png

センサー機器がネットワークに接続されることで、ウェブに流れ込む情報量は爆発的に増加していきます。白書の最後では「リアルタイム」をキーワードに、新しい可能性がさらに開かれると語っています。

リアルタイムのけん引役として、流行のTwitterをはじめとする「マイクロブログ」の存在が挙げられます。これまでのウェブページやブログとマイクロブログとの違いは、更新情報が瞬間的に伝わるという点です。このところ話題のキーワード「リアルタイム・ウェブ(real-time web)」と呼ばれる所以です。

` さらに言えば、ユーザーは検索システムと共に進化を続けているのである。Twitterのハッシュ(#)タグを見てみよう。それは、共有された出来事についてのリアルタイムな検索を促す人間的な集まりである。今一度言おう、人間の参加によってどれほどの構造のレイヤー(層)-- それ自体は未完成で一貫性のないものだが -- が、一連の生データに加えられるのかを見ることができるだろう。 `

Twitterのツイート(つぶやき)に反応してコメントなどを付けて再度ツイートする「Re-Tweet(リツイート)」は、情報を連鎖的に増幅してフィードバックの輪を生み出す機能です。リアルタイムな反応が、連鎖的に増えながら共鳴していく様子は、人間の心が集合して何かを示唆しているようにも見えてきます。

` リアルタイム検索はリアルタイムなレスポンスを促す。リツイート(Twitterのツイート(つぶやき)に反応してコメントを付けて再度ツイート(つぶやき)しなおすこと)された「情報の連鎖(information cascades)」は、最新のニュースとしてTwitter上を駆け巡り、まさに今起こっていることについて知りたいと思っているたくさんの人々にとって最新の情報ソースとなる。そしてふたたび、それがまさに始まりとなるのである。Twitterや、Facebookの「近況アップデート」のようなサービスによって、新しいデータソースがウェブに追加されていく-- それは私たちのコレクティブ(collective、集合的)な心をリアルタイムに暗示しているのである。 `

白書の前半では集合知(collective intelligence)が登場しましたが、ここでは「intelligence(知)」ではなく「collective mind(集合的な心)」と書かれています(ちょっと飛躍してしまったのでしょうか?)。この後、グアテマラやイランの政治状況にTwitterが影響を与えたことに触れて、ネットワークを通じたコミュニケーションが人間をまとめるのだと述べています。

` それは私たちをタイムリーな議論へと導く。テクノロジーの非人間的な影響を懸念する多くの人がいる。私たちはその懸念を共有しながらも、その逆のトレンド、つまりコミュニケーションが私たちを一つにし、文脈を共有させ、そして究極的にはアイデンティティを共有させることを見るのである。 `

リアルタイムがビジネスにもたらすインパクトについては、ユーザーの購買行動がセンサーに補足されてウェブに流れ込むと考えると、続々とリアルタイムに反映されるそうした情報が持つ意味は、企業にとって大きなものとなりそうです。

` リアルタイムということはソーシャルメディアやモバイルに限定されはしない。Googleのリンクは1つの票であるという認識を超えて、WalMartは顧客の購買行為を1つの票であるとし、会計のレジをその票を集計するセンサーであると考えた。リアルタイムなフィードバックの輪は在庫を動かす。WalMartはWeb 2.0企業ではないかもしれないが、彼らは間違いなくWeb Squaredな企業である。 `

また、そのようなセンサーからのデータを除いて考えたとしても、たとえば“リアルタイム・ウェブ”なサービスによってもたらされるリアルタイムな情報群が、企業活動に無視できない影響を与えるかもしれないと想像できます。つまり、そこには企業の顧客であるユーザーのリアルな意図がウェブにリアルタイムに反映されているからです。

` センサードリブン(センサーによって駆動する)な購買行為がなくても、リアルタイムな情報はビジネスに非常に大きなインパクトを与える。顧客がその意図をウェブで(そしてTwitterで)広く宣言-- 彼らの行動または言葉のいずれかによって --すると、企業はその会話に耳を傾けさらに参加しなければならなくなるだろう。Comcast(ケーブルTVの会社)はTwitterを使ってその顧客サービスへの取り組み方を変えている。他の企業もそれに続いている。 `

さて、Web 2.0以後の5年間という題名(“Web Squared: Web 2.0 Five Years On”)で書かれた白書の概要を、4回に分けて見てきました。白書の最終節では「ウェブは今や世界そのものなのだ。(Web is now the world)」と述べて、その「世界」は私たち人間の手助けを必要としていると言います。それは、センサーを介してという仕方だけでなく、ウェブとその進化に私たちが積極的に関わっていくという仕方で、ウェブと世界を推し進めていくのだと主張しているようです。

` もし世界のもっとも緊急な課題を解決しようとするなら、私たちはウェブの力を使えるものにしなければならない -- そのテクノロジー、ビジネスモデルそしておそらくもっとも重要なのは、オープンであるというその思想と集合知そして透明性である。そのために、私たちはウェブをもうひとつ別のレベルへ移さなければならない。私たちは進化が徐々に進むのを待てないのだ。 `

そして白書は次の宣言で締めくくられます。

` ウェブがリアルな世界に受け入れられる時がきたのだ。ウェブは世界と出会う --それがWeb Squaredなのだ。 `

2009年11月27日

2009/11/27
Web Squared(ウェブの2乗)その3

014mahalo.png

ウェブをデータから学ぶことができ、成長するにつれて賢くなるものとして見てきました。ウェブの成長とは、蓄えられるデータ量が巨大化することを指すのではなく、賢くなることなのだという視点がおもしろいところです。白書の後半では、ウェブの成長とこのリアルな世界との関係について考えていきます。

見出しにもなっていますが、リアルな世界とバーチャルとの対応関係について「情報の影(information shadows )」というおもしろい言葉が出てきます。

` こうしたことはすべてThingMのMike Kuniavskyが指摘していた事実を反映している。リアル世界のオブジェクト(モノ)はサイバースペースで「http://www.orangecone.com/archives/2009/02/smart_things_an.html[情報の影]」を持っているということだ。たとえば書籍は、AmazonやGoogle Book Search、Goodreads、Shelfari、LibraryThing、eBay、BookMooch、Twitterそして数千ものブログの中に、情報の影を持っている。 `

たとえば楽曲もiTunesやAmazonなどに情報の影を持っていると言えます。Twitterで話題になっていればTwitterにも情報の影を持っていると言えるでしょう。また、人でさえも、ブログの投稿記事や公開している写真画像などの中に、情報の影を持っていると言えます。

ネットワークが発達したユビキタスな社会では、たとえばごく小さな電子チップを使ってリアルなモノとバーチャル世界とが関連付けられているとイメージされることがあります。RFIDというごく小さな電子タグとネットワークを使ってリアルとバーチャルの両世界を融合する取り組みを意味する“The Internet of things”という言葉が、情報の影に続いて登場します。

` “Internet of Things”について語る人のほとんどは、日常のあらゆるものに付与された非常に廉価なRFIDとIPアドレスの連携が、私たちを“Internet of Things”な世界へ連れて行くのだろうと想定している。そうした想定は、“Internet of Things”が機能するためには、あらゆるものがユニークな識別子を持たなければならないということを指している。 `

つまり“Internet of Things”とは、電子タグによってあらゆるモノに電子的な識別子が割り当てられているというアイデアです。白書ではしかし、実際的にはRFIDのような物理的なタグなしに“Internet of things”は成立するのだと主張します。その背景にあるのは、センサーをベースとしたデータと、データから学んで成長するウェブの存在です。

` Web 2.0の感覚が示しているのは、私たちが“Internet of Things”を手に入れるのは、センサーからのごちゃ混ぜのデータを通してなのだということだ。センサーからのデータは、機械学習アプリケーションに貢献し、それをボトムアップする。機械学習アプリケーションは、ゆっくりとだが、扱えるデータをどんどん理解できるようになる。スーパーマーケットの棚にある1本のワイン(または何か他のものでもよいが)には、“Internet of Things”に参加するためにRFIDを必要としない。必要なのはあなたが写したそのラベルの画像1枚だけだ。携帯電話、画像認識、検索があれば、知覚するウェブ(センシェントなウェブ、sentient web)が残りの仕事をやってくれる。スーパーマーケットの商品すべてが機械で読み取れるユニークなIDを持つようになるまで、私たちは待つ必要なないのだ。それよりも、バーコード、写真に付けられたタグやその他の“ハック”というリアリティからアイデンティティを強引に取り出すシンプルな方法を使って、同じことをやり遂げられるのだ。 `

たいていの人は、おもしろいウェブのリンクにコメントを付けて友だちに送ったことがあるでしょう。ウェブ上では情報は、転送されたり、コメントされたり、ブログの記事に書かれたりなどしてぐるぐるとフィードバックの輪を描きます。たとえば、何の気なしにしたクリックという行為でさえ、リンクに対するユーザーのフィードバックのひとつであると言えます。情報の影はそうしたフィードバックの連鎖の中で濃さを増していきます。

` 情報の影がますます濃くなり、より充実するにつれて、明示的なメタデータへのニーズは低くなっていく。カメラやマイクがウェブの目や耳となり、モーション・センサーや近接センサーはウェブの固有受容感覚に、GPSはその位置感覚になる。まさに、赤ちゃんが成長してくかのようだ。私たちが遭遇しているのはインターネットであり、インターネットは私たち自身なのだ。 `

末尾の一文ではインターネットと人間が急接近したようで驚かれたかもしれませんが、ウェブは単独で成長するわけではありません。赤ちゃんに親がいるように、ウェブは人間の行動や態度とつながっています。これまで述べてきたセンサーが提供する多様な情報も、人間なくしては成り立ちません。人間がセンサーを介してウェブに指示や情報を与えている、と言うこともできるでしょう。

` センサーやモニタリングのプログラムは単独では作用しない、人間というパートナーと協調して動作するものなのだ。私たちは写真プログラムに私たちにとって重要な顔というものを認識できるよう教えたり、また私たちに関心のあるニュースを共有したり、自分のツイート(Twitterでのつぶやき)をタグ付けしたりすることで、ずっと簡単にグループ分けできるようにしている。私たち自身に価値を付加することで、同時に私たちはソーシャル・ウェブに価値を加えている。デバイス(機器)が私たちを拡張し、私たちはそれらデバイスを拡張するのである。 `

逆説的に聞こえるかもしれませんが、さまざまなデータを通してウェブが私たちのリアルな世界と協調する一方で、私たちの側からも世界と強調するという視点が価値を持つのではないか。今回見てきた節の後半では、Instrumenting the world のようなフレーズで相互の協調について語られています。

身近な話としてニュージーランドのタクシー運転手の例では、お客を拾った時の情報(GPS、天気、乗客その他3つの項目)をコンピュータに入れて解析し、収入を最大化するにはどの地点でお客を待つべきかをはじき出した話が紹介されています。もちろんそのタクシー運転手は、他の運転手よりもずっと少ない仕事量でとても良い収入を得ているのだそうです。節の終わりにはこんなアドバイスがあります。

` データ解析とその視覚化(ヴィジュアライズ)そしてデータの中にパターンを見出すテクニックは、今後ますます価値のあるスキルセットになっていくだろう。 `

今回は“Web Meets World: The "Information Shadow" and the Internet of Things”の節を紹介しました。今回で白書を最後まで紹介したかったのですが、最後の2節が残ってしまいました。次回で締めくくりたいと思います。

2009年11月13日

2009/11/13
Web Squared(ウェブの2乗)その2

014mahalo.png

ウェブの情報量は日々増え続けますが、それをさらに加速するのが「センサー」が提供するさまざまな情報です。たとえばGPS付きの携帯電話のように、センサーを備えた機器がネットワークへ接続されると、センサーが取得した情報がネットワークへ流入することになります。白書の前段では、そうした「増え続けるデータ」と、それを活用する仕組みとして「集合知(collective intelligence)」がキーワードとなっていました。

白書の中段では、集合知についてさらに踏み込んでいきます。ウェブは「クラウドソーシング(不特定多数の人に業務を委託する雇用形態)」だという見方がありますが、たしかにアプリケーションが人間に役割を割り当てているとも考えられます。

` オンライン事典(Wikipedia)やレビュー付きのオンラインカタログ(Amazon)、地図上へ情報を追加する(ウェブによる地図アプリケーションの数々)、最も人気のある話題を見つける(DiggやTwine)のように、一般的に、アプリケーションとはユーザーに特定の役割を果たさせるために作られているものであると理解されている。AmazonのMechanical Turk(メカニカルターク)というサービスは、人々をつなぎ合わせて、コンピューターだけで処理するのが難しい仕事を割り振るプラットフォームを提供することまでするのである。 `

しかし、こうしたことが「集合知」の意味するところなのか、と白書は問いなおします。人間やセンサーがもたらす膨大な情報を浴びるようにして存在するウェブを、周囲からの刺激や環境から学習していく赤ん坊にたとえて、次のような問いを立てています。

` ウェブは成長するにつれて賢くなっていくものなのだろうか? `

Googleでの検索結果を例にすると、結果の上位に示されるリンクは、検索語の利用頻度やユーザーのクリック数などの動向を反映して変化します。このあたりから、ウェブに対する「入力」という視点がキーワードになってきます。

` 1998年にLarry PageとSergey Brinが画期的な打開をなした。リンクとはもはや新しいコンテンツを見つけるための手段ではなく、コンテンツを、ランク付けしたり、より洗練された自然言語の文法へと結び付けたりする手段であると示したのである。簡単に言うと、あらゆるリンクのそれぞれが1票となり、ナレッジのある人びとからの投票によって(投票した人びとの数と質によって計られる)、他のリンクよりも多く票を得るということである。 `

この場合はユーザーの検索行為や振る舞いが「入力」となってウェブに反映されています。さらに、iPhone用のGoogle Mobile Appでピザレストランを検索する例を挙げています。このアプリは音声認識モードとGPSというセンサーを使って、声から音声データベースを解析することで検索語を、GPSから位置情報を得て、検索を開始します。ここで注目すべきは、明示的なかたちで「入力」を与えることなく、ウェブから結果が得られるという点です。つまり、こうした仕組みの後ろでは、アプリケーションが「学んだり」、「教えられたり」しているのです。

` アプリケーションによって参照されたいくつかのデータベースは -- GPSの情報を位置情報に変換したように -- アプリケーションに“教えられる”一方で、音声認識のように、巨大でクラウドの元になるようなデータセット(ひとまとまりのデータのこと)を処理することによって“学ばれて”いるのだ。 `

「入力」を、明示的なものと暗示的なものの2種類に分けてみると、そこには「ウェブが学ぶ」という仕組みが見えてきます。興味深いのは、暗示的「入力」からウェブが意味を取り出すという視点です。

` しかし、ウェブはどのようにして学ぶのだろうか? 意味とはなんらかのある分類によって解読されるもので、コンピューターのプログラムはそれを理解したりまたはそれに反応したりするだけなのだと、イメージされているかもしれない。私たちが実際に見てきたのは、意味とは多数のデータから“推論されるようにして”学ばれるということだ。 `

「ウェブが学ぶ」という過程の中でポイントとなるのは、データをいかに構造化して処理するのかということです。なぜなら、構造化されたデータは、ウェブにとって「意味」を持つことができるからです。その初歩としてまず考えられるのは、構造化されたデータ同士を合わせることで新しい「意味」を得る場合です。

` 他のケースでは、意味はコンピューターへと“教えられる”。つまり、アプリケーションに、ある構造のデータセットの間にある解読方法が与えられているということだ。たとえば、通りの番地とGPSの座標とを連携させることで、学ばれるというよりは教えられるのである。いずれのデータセットも構造化されているが、お互いをつなぎ合わせるためのゲートウェイ(通路)が必要となる。 `

次に、構造のないデータを構造化するということがあります。これについては、「一見すると構造化されていないデータを構造化する」、つまりデータの中からある構造を見出すことだ、と述べています。まったくでたらめなものの中からある意図をひねり出すわけではありません。

` または、アプリケーションに、ある2つのデータの間にある関連を理解する方法を教えることで、構造化されていないように見えるデータに対して構造を示すこともできるだろう。You R Here(http://www.longtrek.com/LongTrek/)というiPhoneアプリは、こうした2つのアプローチを組み合わせたようなものである。ユーザーはiPhoneのカメラを使って、Googleマップなどの一般的な地図アプリケーションに載っていないような詳細な地図・・たとえば、公園の足跡マップやハイキング・マップなどのような・・を写真に撮る。そしてiPhoneに搭載されたGPSによってユーザーの現在位置を地図上に設定する。ある距離を歩いて、次の地点を設定する。するとiPhoneはオリジナルの地図画像の上にユーザーの足跡を記録してくれる。これはGoogleマップに記録するよりもずっと手軽だ。 `

そして、これに続く次の段落がポイントになります。

` ウェブ上で最も基本的で役に立つサービスのいくつかはこのようなやり方で作られているものだ。最初は構造化されていないように見えて見過ごされていたデータを、見分けて、そしてその規則性を教えるのだ。 `

さて、ここまで読み進んでくると、ウェブは成長するにつれて賢くなっていくもののようです(おばけのように巨大に成長し過ぎないのかな、と妄想してしまいそうですが)。今回は、"Redefining Collective Intelligence: New Sensory Input" と "How the Web Learns: Explicit vs. Implicit Meaning" の2つの節を見て来ました。白書の後半では、ウェブと人間との関連について再考しています。ウェブがおばけ入道になるのかどうかは、次回の後半を読んでからのお楽しみです。

2009年10月30日

2009/10/30
Web Squared(ウェブの2乗)

014mahalo.png

今回は、先日開催された web 2.0 Summit で公開されている白書 "Web Squared"を要約して紹介したいと思います。web 2.0 Summit は 、Web 2.0ブームに沸く今から5年前に始まったカンファレンス(当初はWeb 2.0 Conferenceとして開催)です。今年のweb 2.0 Summit は10/20から2日間サンフランシスコで開催されました。Web 2.0の提唱者であるTim O’ReillyとJohn Battelleによって書かれたこの白書は、"Web Squared: Web 2.0 Five Years On"と題して、このカンファレンスを立ち上げてから現在までの5年間を振り返りながら、ウェブのこれからを考えようとしています。

その最初の節で、キーワードとなるのは「増え続けるデータ」です。現在、携帯電話をはじめとして、さまざまな機器が何らかのセンサーを備えています。また、それらセンサーの情報がネットワーク上で利用される機会も一般的になりつつあります(たとえば地図情報と結び付いたサービスなど)。このとき、ネットワークはもはやインフラではなく、プラットフォームとして機能していると考えられます。

白書では、「プラットフォームとしてのネットワーク(network as platform)」の上で、アプリケーションは恒常的に組み立てられ続けており、またその原動力となるのは連鎖的に広がるユーザーのさまざまな活動による「ネットワーク効果」だと語っています。

` 私たちの洞察の中で重要なのは、「プラットフォームとしてのネットワーク(network as platform)」は、たんにネットワーク経由で古いアプリケーションを提供する「サービスとしてのソフトウェア(software as a service)」ではなく、はるかにそれを超えるものを意味しているということだ。それはつまり、まさに多くの人がそれを利用すればするほど改良されてゆく「ビルド(構築)されつつあるアプリケーション」と、ユーザーを獲得するだけでなく、ユーザーから学びまたユーザーの貢献の上に成り立つ「ネットワーク効果」を意味している。 `

続いて、ユーザーやセンサーが生み出す膨大なデータを有効なものにする仕組みとして集合知(collective intelligence)について触れています。「Web 2.0とは、つまり集合知をつなぎ合わせることなのである。」とも語っています。センサーがネットワークに接続された世界では、センサーが提供する情報は、これまで人間が入力していた情報とは違ったものを提供すると述べています。その特徴は、リアルタイム性とその量の多さです。

` 集合知アプリケーションは、もはや人間がキーボードに何かを打ち込むことによってだけでなく、各種センサーによって増え続けるものによって動かされているのだ。電話機やカメラはアプリケーションにとっての目や耳となり、運動や位置センサーは私たちがどこにいるかを伝え、私たちが何を見ているのか、またどれくらい早さで動いているのかを伝える。リアルタイムに、データは収集され続け、提供され続け、そして変化し続けるのである。その参入の規模はけた違いに増加していくのである。 `

ネットワーク効果によって、データ量の増大はそれを処理するアプリケーションが次々と生み出されます。現在においてすら、ウェブはもはや静的なドキュメントではなく、動的なある世界を持ちえていると言っても過言ではないでしょう。ウェブが作る世界を、どのように捉えて、考えればよいのか。この白書がその手掛かりになるかもしれません。

` ウェブはもはや世界の何かを記述した静的なHTMLページの集合ではない。増え続けるウェブは世界そのものである――世界中のあらゆるものと人たちが「情報の影(information shadow)」を投げかける。情報の影は、データのオーラのようなものであり、インテリジェント(知的)なやり方でキャプチャー(捕捉)されて処理されるとき、意外な機会とびっくりするような言外の意味をもたらすのである。Web Squared(ウェブの2乗)は、こうした現象を探査してそれにある名前を付けるための私たちの手法なのである。 `

今回は白書の導入部分を紹介したところで筆が尽きてしまいました。また続けて紹介したいと思います。 白書の原典は下記から参照できます。PDF版のダウンロードもあります。

2009年10月16日

2009/10/16
HTML、5度目の大改訂

013mahalo.jpg

Google Waveがプレビュー公開される直前に、「Google Chrome Frame」というプラグインがリリースされています。これは、MicrosoftのブラウザIE向けのプラグインで、IEをGoogleのブラウザChromeに変えてしまうというものです。おおまかに言うと、その理屈は、IEの中にフレームを作ってそこでChromeを動かすというもの。おもな利点は、高速なJavaScriptエンジンとHTML 5の機能がいくつか利用できるようになると言う。ブラウザの中でもう一つブラウザを動かすことを考えると、不思議に思われるかもしれませんが、使ってみると速くなるというレポートもあります。

プレビュー公開が発表されたGoogle Waveでは、IEを使ってログインすると、Chrome Frameをインストールするか、またはIEではなくGoogle ChromeやFirefoxなどを使うよう促すウィンドウが表示されることからも、Google Chrome FrameのリリースはGoogle Wave普及への布石のひとつと言えそうです。

さて、今回注目したいのはHTML 5です。

Webの要となるHTML(ハイパーテキスト・マークアップ・ランゲージ)については、皆さん一度は耳にしたことがあると思います。インターネット・ブームの初期にバズワードにもなっていた「ハイパーテキスト」を思い出す人もいるかもしれません。

HTMLは、通称W3C(World Wide Web Consortium)と呼ばれる標準化団体によってその規格が勧告されています。HTML 5は、文字通りその5度目にあたる大幅な改定版です(現行のHTMLはHTML 4です)。

HTMLには文書の構造を定義するために作られたというルーツがありますが、一方で進化するWebコンテンツに対応する必要にも迫られています。このため、HTMLをXMLで定義しなおしたXHTML(エクステンシブル・ハイパーテキスト・マークアップ・ランゲージ)を挟んで、標準化団体に政変があったりしながら、昨年(2008)の1月22日にHTML 5のドラフト(草案)が発表されたのでした。

その次世代HTML 5では、マルチメディア向けの<audio>や<video>、また2D画像を描画する<canvas>などの新しいタグ(Google I/Oでの印象的なプレゼン)に加えて、API(アプリケーション・プログラミング・インタフェース)も追加されています。たとえば、Webアプリケーションやデータをキャッシュ(PCなどの機器に保存)してオフラインでもコンテンツを稼働させることができるようになるとか。こうなると、Webアプリケーションとデスクトップ・アプリケーションを区別する意味がますますなくなりそうです。HTML 5によって、Webコンテンツで表現できることが広がるのはもとより、Webアプリケーションはより柔軟で身近なものになっていくのかもしれません。(HTML 5 - HTML 4からの変更点

HTML 5は今日現在まだドラフトの状態ですが、すでにFirefox 3.5、Google Chrome 3、Safari 4、Opera 10などでサポートされています。まだ不安定な部分もありますが、例にもれず、すべては進行しながら、部分的に完成しつつ、そして発展しています。今後の動向にwktkです。

追記:上の画像は、この記事のcanvas.htmlを参考に、Googleのロゴの鏡像を下記のHTMLで表示したものです。

<!DOCTYPE html>
<html>
<head>
<script type="text/javascript">
function init() {
    // img要素を作成
    var image = document.createElement("img");
    // 画像の読み込みが完了したら
    image.onload = function() {
        var canvas = document.getElementById("canvas1");
        // 描画コンテキストを取得
        var ctx = canvas.getContext("2d");
        // 画像を描画
        ctx.drawImage(image, 0, 0);
        // 画像を半透明にし、画像を反転させて描画
        ctx.globalAlpha = .4;
        ctx.transform(1, 0, 0, -1, 0, image.height * 2);
        ctx.drawImage(image, 0, 0);
    };
    // Googleのロゴ画像のURLをセットし、読み込み開始
    image.src = "http://www.google.co.jp/intl/ja_jp/images/logo.gif";
}
</script>
</head>
<body onload="init()">
<canvas id="canvas1" width="300" height="300">
</canvas>
</body>
</html>

執筆者のプロフィール

伊藤 篤
(イトウアツシ)

株式会社オライリー・ジャパン
編集長

旅行業界紙、旅行書出版社やパソコン誌などでのライターや編集者を経て、1995年ごろよりWeb制作に関わる。文化放送系の新卒採用向けWebサービスや中古ゴルフクラブ販売のECサイト、ファンサイトでお馴染みの「極楽クラブ」などの企画制作に携わる。2002年から株式会社オライリー・ジャパンに参加。2004年より現職。"changing the world by sharing the knowledge of innovators"のミッションの下、オープンソース・テクノロジーを中心に、最新テクノロジーを書籍化している。趣味はウクレレと、Lightweightなプログラミング言語でちょっとしたツールを書くこと。

O'Reilly
O'Reilly Japan

最近のトラックバック

カテゴリー

ファンサイト