安原真広のわるくない記述

2016年10月07日第16回 料理という完結

僕の平日の帰宅時間は21時〜23時あたりが平均なので、帰宅後の時間をどう使うかというのはかなり大切なテーマなのですが、料理だけはよっぽどのことがない限り、するようにしています。

料理の何がいいかというと、完結が、とても小さなまとまりとして得られること。冷蔵庫にある食材を念頭に置きつつ、買い物をして、切る煮る炒める、そして食べる。この時点ですぐに結果がわかりますよね。おいしいとかまずいとか、こうしたから良かったとか、次はこうしたほうがいいだろうとか。食べたら食器を洗って、乾かす。塗り物や印判は水気を取って、紙に載せてしまう。

こういう、とても小さなサークルなのだけれども、完結している行為が料理だと思っています。しかも、自分の骨肉になる、生きるための術として無駄なく機能している。このような体験は他にはなかなかないと思っています。

正直なところ、自炊は特段コストパフォーマンスが良いものではないということ、自覚しています。調理時の光熱費や水道代、そして買い物や洗い物に費やす時間、それらコストを気軽に食べられる外食と比べればトントンか、もしくは分が悪いのではないかとさえ。

でも、この小さな成功が、僕にとっては得がたいものなのです。続けるとどんどん良くなるんですよね。食材の買い方とか、包丁の使い方とか、煮立て具合の駆け引きとか。

仕事でも日々多くのことを学んでいるし、自分の血肉になっていることは間違いないのでしょうが、さすがに30年近く生きていると、それらが即時的に実感できるものではないこともよくわかる。だから、日々の料理を生活として積み重ねていくことで、小さな波風を大きな波風の合間に細かく立て続けることが、僕にとっては重要なのかも知れません。

愛用している柳宗理の鉄のフライパン(フライパンは絶対に鉄派です。手間がかかっても、あの熱量と相棒感は代え難い)と、グローバルの牛刀(洗う度にスポンジがスパスパ切れて恐ろしい)、一緒に歳をとってきましたが、これからも一緒に歳をとっていくことを願っています。

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執筆者

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安原 真広

ファッション誌編集者

1987年神奈川県横浜市出身、日本大学藝術学部卒業、一橋大学大学院言語社会研究科修了。文章を読んだり書いたりするのが幼い頃から好きで、続けるうちになんだかんだ書く仕事に。ファンサイトでは12年の春頃より業務委託・社員としてライターや編集、営業と様々な仕事を経験。15年10月より現職。

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