花も実もない! Marketing One Hit Shot

2011年11月18日第217回『ベンチャーを楽しむ?!』

▼ベンチャー嫌いの大手組織

 いま、多くの企業の市場戦略が、新しい市場を生み出せないという「壁」に突き当たっています。
即ち
(1)周到な販売計画を実行しても、期待通りに商品が売れない
(2)優れた商品を販売するだけでは、顧客ニーズを満たせない
(3)ベンチャー企業の動きによって、商品の売れ行きが大きく変わる
(4)小さな新聞記事によって、商品の売れ行きが大きく変わる
(5)過去の成功事例を模倣しても、ヒット商品は生み出せない
(6)最新の手法で市場予測をしても、その予測が当たらない
(7)緻密な市場分析をしても、顧客ニーズがつかめない
なぜこうした状況に直面するのでしょうか?
主な理由の一つには、シーズ型産業からニーズ型産業への必要が叫ばれながら依然としてそこへ踏み込めない「ベンチャー」を嫌う「旧さ」にあるようです。
ベンチャービジネスは危機の時代には何時も期待されたモデルです。ベンチャービジネスブームが過去3回もありながら消えてしまった原因は、言わば「業界壁」と「既得権益」、「変化を嫌う旧さ」にあると思います。また大手企業は手を汚さずにベンチャーの実りを手に入れたい思惑もあったからです。

▼変化した生態系への鈍感さが生むマイナス成長

 今日も、マスコミ上ではTTP(環太平洋経済連携協定)や3.11震災後の農水産事業の復興などが話題です。
その論議で完全に欠落しているのは内外含めた市場を基本とした「生態系変化への分析」と「適応戦略」です。言って見れば消費者不在の論議です。
当然のことながらこれらについては空理空論ではなく、具体的に実を挙げることができるロードマップづくりが必要なことは言うまでもありません。それにはどうするか?
基本は生態系に適応できる脱シーズ発想であり、消費者にどのようなメリットを提供できるか?でしょう。
水産で言えば、いま北海道ではサンマ、イカの大豊漁ですが、かたや、震災の直撃を受けた東北の漁港では生産性は昨年までのおよそ30%にまで激減しているとかです。
一方、私自身の生活の現場では、水産製品のみならず野菜を含め「高い」「不味い」「キケン」の生鮮品を仕様がなく購入させられており、不満はいっぱいの状況でいます。
こうした生産と消費のミスマッチだけでなく、山積する問題はなぜ起きており、改善の兆しが見られないのでしょうか?一口に言えばプロダクトアウト(この場合、シーズ=資源発想)のビジネスモデル発想が生起しつつある新しい環境変化、あるいは企業が依って立つ生態系の変化に対して余りに硬直的であることが原因ではないでしょうか?

▼脱プロダクトアウトと脱単独志向

人間の創り上げた組織や社会システムはしばしば自然界に存在するシステムを無意識的に模倣していると言われています。そして企業の生きる資本主義市場は様々な生き物の切磋琢磨する生態系に等しいということが自然に理解されます。
 豊かな生態系とはそこに生きる生物の種類が豊富で、それぞれの個体群が健康であり、かつ系として安定している場合を指します。
多くの識者が指摘するように、現代の産業社会は情報化革命による激変期にあると言えます。つまり生態系を取り巻く環境が大きく変動している最中なのです。このような急速な環境の変化に対し、何も手を打たず傍観していれば、そこに棲む企業群は適応しきれずに枯死し、日本市場という生態系はきわめてプアな状態に陥ってしまうでしょう。その解決方向のひとつが脱プロダクトアウト発想です。
と同時に「脱プロダクトアウト」を目指すにしろ、企業はもとより国においてすら「単独」では実現できない、ということに気づかされます。

 ▼「見ること、問うこと」から始めよう!

 いま東北は「復興」バブルと言われています。この復興がバブルとなるのはいわゆる「焼け太り」効果で、過去の復権のためだけにまとまったおカネが動いているに過ぎないでしょう。また生態系が変っているのにそれを従来の発想でケアしたところで、所詮は無駄骨折りであることは見えみえです。高級シャンパン「ドンペリ」、高級車、高級キャバクラでの大判振る舞いなど一睡の夢にしか過ぎません。
しかし、一方で被災地の海辺では闇市や屋台が動いているとか?この現象は「お上目線」では困った問題かもしれませんが、マーケティングに関わる立場から見るならば、人の欲望が健全であることの何よりの証明であると思います。かつての闇市がそうであったように、そこには多彩な商売が芽吹いていく可能性があり希望がありましょう。
最近巷では外れの町での「立ち飲み屋」巡りが流行していますが、そこには何があるのか?私たちは真摯に「見て、かつ問わね」ばなりません。
一介のマーケティングマンとしてはこれら「飲み屋」には、旨い、安い、気楽だけではない、無意識に既存の資本論理に反発するベンチャーのエネルギーがあり、それが「いい感じ」となり、人々の共感を誘っているかに見えるのですが・・?
 かつて「流通革命」なるコトバがありました。その言葉の下に「流通の紅衛兵」と自負する若者たちが結集。20世紀の成長を導きました。しかし、その革命の旗手達はいまや旧い権益保護勢力となっています。今は老いた紅衛兵を自称し若者をアジリ、血と汗を絞ったベンチャーの先達たちは、「いま」をどう見るでしょう?
散発するエネルギーはほっておけば散逸してしまいます。しかし、仮に玉石混合であっても玉を集めれば大きな宝になるはずです。この選別・収集作業には、目利きとゆとりが不可欠で、今日の飯に事欠く企業にはムリな作業です。

▼枯れ木に花を咲かせよう!

しかし、エスタブリッシュした企業にはまだユトリが感じられます。巷の風評に臆病になって、闇雲に帳尻合せに走らずに情報化の進展を利用しつつ、お金持ちの利を活かせれば、潜在するベンチャー精神を吟味、楽しみ、育て、成功事例を積み上げられる筈。そしてそれらが市場の一つとなるように誘導して機会を成長に結びつけていくことそれほど困難ではないと思われます。
合せて、これまでの古い環境でしか生きられないような古い体質の企業群・組織の淘汰を目指せるとも思います。まさに一石二鳥?
「貧乏神は貧乏が好き」。ですから臆病風に吹かれていると本当の貧乏風に見舞われますよ。お伽話の花咲爺さんは灰を蒔いて枯れ木に花を咲かせました。
新生態系に花を咲かせるにはどんな灰がよいのか?蒔かねば何も始まりません。

“第217回『ベンチャーを楽しむ?!』” への1件のコメント

  1. 小島 美紀子 より:

    いつも宇田さんのブログを読ませていただていました。
    訃報をファンサイト通信で知り、残念でなりません。

    お会いした事はありませんでしたが、広告制作に携わりまだまだ悩む事の多い私にとって、学ぶこと・知る・気づかせくれ、考える機会をくれるブログでした。

    ありがとうございました。
    ご冥福をお祈りいたします。

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執筆者

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宇田 一夫

ファンサイト有限会社 顧問/コミュニケーションプロデューサー

1939年3月生まれ。 早稲田大学第一文学部史学科西洋史卒。
1962年株式会社博報堂、株式会社日東エイジェンシーなどを経て、株式会社エイムス設立。アカウント・プランナーとして「コミュニケーション&マーケティング」を課題に各種キャンペーン・プロジェクトを企画・プロデュース。
2005年愛知EXPO中央アジア共同館(ザ・グレート・シルクロード)プランナー
東洋美術専門学校視覚伝達学科講師

【賞】国際見本市、日経新聞・日経産業新聞・日経流通新聞・ショッピング他などで受賞

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