徒然草

2018年12月18日第84回 ラクガキピカソ

視界が狭くなり、頭を押しつぶされる感覚を覚えて、それが借りたダウンジャケットのフードを被っているせいではないことを理解するのに時間はかかりませんでした。ほんの少し歩くと、身体が普通には動かせない標高4,200メートルを実感するのです。最近の企業ミーティングは、普段仕事をする職場から離れて開催されることが少なくないそうです。確かに日常から離れた環境で、発想を新鮮にすることができるのでしょう。ただ高尾山以外に登山の経験ない僕は、突然空気の薄い山頂で混乱に陥り、日常から離れるどころか、この世から離れていくのではないかという初めての体験をしたのです。

文字通り神々しい雲海と、朝日の影となる山肌の景色は、古くから多くの神々が住まう地とされるに相応しく、言葉にするのは難しいのです。神を信じ崇めるには十分な景色と空気が自分に触れ合う音の中で、感嘆のため息もつかの間、呼吸が次第につらくなっていくのを僕は感じました。ガイドの指示に従い、麓から深呼吸して、ゆっくりと水分を摂取してきたにもかかわらず、意外と強くない自分に驚き、登山家は本当に凄いなと思うのでした。降ってきそうな星空とご来光を堪能し、暖かいバスの中へ。そう、足を使って山頂まできたわけではないのです。

ツアーでバスに揺られて山頂まで上ってきたので、カラダが高地に対して少しずつ順応してきたわけではありません。一歩一歩登ってくれば次第に環境の変化に慣れたのかもしれませんが、一時間ほどバスにただ身を委ねて、眠気とだけ戦ってきたので、目の前に突然に広がった世界に面食らうのも当然なのでしょう。自分で経験してみて初めてわかります。一足飛びがないことも積み重ねが大切なことも。急に何かを変えることも、一つの事象だけが展開を変えることもないのです。いろいろなことが重なって、いま僕もココにいるのでしょう。

ピカソが30秒で紙切れに描いた100万ドルの絵の有名な話があります。その絵を描く30秒は、30年の重なりの上のほんの30秒という話です。まさに、このひとときは、色々な人たちが様々な思いで歩んで紡いできた歴史の上にあるわけです。仮に成功したとしても、それは自分たちだけのものではないし、未来の成功も、いまの一歩が創りあげるに違いありません。間もなく2018年も終わります。1年間を回顧するのですが、その作業は、もっとずっと前の自分への振り返りなのかもしれません。いまの一歩は、次の世代の一歩なのかもしれません。

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執筆者

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南谷 康宗

経営家・個人投資家・事業戦略家

慶應義塾大学法学部卒
幼少を欧州で過ごし、帰国後サッカーに没頭。

中学からエスカレーター校に入学し、順調にスポイルされ大学卒業。 10年の金融機
関勤務を経て独立。
現在は複数社で役員を務め経営に携わるとともに、自ら投資家としても事業に参画。

クライアントの依頼に応じて、事業ごとの戦略策定や起業にも携わる。
小さな成功と大きな失敗を繰り返し、不惑40歳を超えても迷い続ける人生の旅人。

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