徒然草

2018年03月26日第77回 もうひとつの土曜日

 いつもよりゆっくり目覚め、バルコニーに小さなテーブルとやっと座れる程度の大きさの折り畳めるイスを出し、クロワッサンとチーズがのったプレートとコーヒーカップをテーブルに。まだ肌寒いカタルニア地方の空気と一杯のエスプレッソが目覚めさせてくれる遅く起きた土曜日は、それだけで僕を贅沢な気持ちにさせてくれ、まして窓から眺める景色が心地よい土色の壁と石畳であれば、それはなおさらです。
 東京の喧騒から離れている自分を少しだけ罪深く思い、渦中で奮闘する方々のことを考えていました。

 まさに渦の中にいると気づかないことも多く、視野が実に狭くなり、そんなときには決まって隣の芝が青く見えたりします。物事の本質から目を背けたり、意図せず身近な仲間を傷つけてしまったり、正常な判断や行動ができなくなることも多くなります。経験上それはチームであり会社組織のような大きなものであり、多分にもれずそうなのです。
 組織に目を向けると、そのような現象は、少しの成功や満足のあとに訪れることが多いような気がします。何年か続けて増収増益を計上したとき、内容の充実した勝利を重ねたとき、短期的な目標を達成したとき。

 幸せや満足、平和を手にすることは重要で、そのために僕らは生きていると思うのですが、ひとたびそれを手にすると、余計なことが気になったりするものです。必死にもがいて苦しんで、なんとか満足を手に入れようとしているときの方が正しい判断ができたり、排水の陣で戦っているときの方が結束できたり、逆境で良い結果を残せた経験、誰にでもあるのではないでしょうか。満ち足りて、かえって不幸になることも。
 平和だからワイドショーのネタに注目するわけですし、少し裕福だから隣のデスクの給与体系が気になるわけです。

 いかなる環境下でも同じ心でいること同じ志をもつことは難しいことですが、幸せを手にしたあとでも、同僚や仲間を妬みや否定的な見方で見るのではなく、思いやりをもって接することはできると思うのです。そしてそのことで、組織は次の目標に推進できるのではないでしょうか。
 後の選手は前の選手に感謝し、前の選手は後の選手を労い、ベンチはピッチを盛り上げ、ピッチはベンチを慮る。監督は選手を誇り、選手は監督を尊ぶ。単なるキレイゴトに思えるかもしれませんが、相互の敬意と信頼、基本的なことがどのような組織でも次の成功を手に入れる基礎となるように思えます。そしてその積み重ねが、伝統や永続する哲学となって後世に語り継がれていくに違いありません。いま僕は、渦中に戻る心の準備をしています。

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執筆者

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南谷 康宗

経営家・個人投資家・事業戦略家

慶應義塾大学法学部卒
幼少を欧州で過ごし、帰国後サッカーに没頭。

中学からエスカレーター校に入学し、順調にスポイルされ大学卒業。 10年の金融機
関勤務を経て独立。
現在は複数社で役員を務め経営に携わるとともに、自ら投資家としても事業に参画。

クライアントの依頼に応じて、事業ごとの戦略策定や起業にも携わる。
小さな成功と大きな失敗を繰り返し、不惑40歳を超えても迷い続ける人生の旅人。

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