徒然草

2018年02月24日第76回 上海ハニー

 いつも通り着陸の振動で目が覚め、脱いだスニーカーを足で探りながら窓の外の天気を確認しました。いつもと違うのは、まだ滑走路を結構な速度で走っているにもかかわらず、乗客の一人が荷物をとろうと立ち上がり、キャビンクルーに中国語で怒鳴られるという信じがたい光景だけでした。
 初めての上海は雨模様。おまけに、聞いていた以上に列に並ばない人たちを見て、文字通り晴れない気分になり入国管理へと歩くのでした。

 とにかく大きい。この国に対する印象は、コレにつきます。空港、高速道路、ホテル、スタジアム。アメリカの大きさとは種の異なる大きさを感じます。なんと表現すべきか難しいのですが、国民全体が成長しようとしているというか、ひとりひとりが無意識に拡大・向上・増殖…とにもかくにも大きくなろうとしているように感じるのです。満ちても満ちても足りていないかのように貪欲に成長していく雰囲気が人々の息づかいや街並みから、正月で閑散としているにもかかわらず伝わってきます。相当な圧力で、決して心地よくはありません。試験前に寸暇を惜しんで猛勉強している隣の席の級友から感じた圧力に似た種類のものでした。

 要するに圧倒されてしまうのでしょう。飲み込まれるような感覚です。圧倒という意味では、見事なまでにキャッシュレス社会であることにも驚きを隠せません。アリババの「Alipay」か、テンセントの「WeChat」が、金融インフラが整わない社会構造とクレジットカード決済を嫌う小売業者のニーズをカバーしています。
 アテンドしていただいた友人のアプリなしでは、人並みの生活ができなかったといえば多少大袈裟ですが、2016年に5兆ドルを超えたモバイル決済額は実にアメリカの50倍、堂々の世界一です。

 バンドに足を運ぶと少しホッとします。黄浦江に面してヨーロッパの建築様式が建ち並び、昔風の街路灯が情緒を醸し出しており、ゆったりとした時間に対する憧れのような感情がこみあげてきます。ここで色々な人間模様があったのだろう、様々な利害が衝突したのだろう。あらゆるモダンが溢れ、アメリカのジャズ、フランスのカフェ、ダンスホール、チャイナドレス…。
 ふと、たなびく赤い国旗を見て再認識します。19世紀アヘン戦争に敗れ、自国に各国の租界を形成させた中国が、いまや規模で世界一となり、世界を飲み込もうとしています。変化する時代を目の当たりにし、あらためて、規模で争うことへの限界とストレスを感じ、違う何かを追求することを心に誓うのでした。上海honeyでなく上海moneyに驚かされた一夜は静かに過ぎていきます。正月の名物、爆竹も近頃は危ないという理由で禁じられているそうです。

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執筆者

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南谷 康宗

経営家・個人投資家・事業戦略家

慶應義塾大学法学部卒
幼少を欧州で過ごし、帰国後サッカーに没頭。

中学からエスカレーター校に入学し、順調にスポイルされ大学卒業。 10年の金融機
関勤務を経て独立。
現在は複数社で役員を務め経営に携わるとともに、自ら投資家としても事業に参画。

クライアントの依頼に応じて、事業ごとの戦略策定や起業にも携わる。
小さな成功と大きな失敗を繰り返し、不惑40歳を超えても迷い続ける人生の旅人。

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