徒然草

2017年02月14日第64回 粉雪

 わずか1年で一桁変わる数字へ増収を遂げたクライアント現地法人のコスト管理を依頼され渡欧しました。周知のとおり、増収つまり売上増加は思いのほか難しく、一度軌道に乗った事業のコスト見直しは、売上を伸ばすことに比べればさほど難しい作業ではありません。このクライアントがわずかな期間で結果を出すには、いくつかの理由があって、それはロジカルなものと、決してロジカルとはいえない古き良きものがあります。

 インターネット広告の代理店を主業とする彼らは、ある意味どんな事業でも売上をあげることができてしまいます。消費者に直接アプローチする広告という武器をもっているため、消費者の心理を掌握することに当然長けており、とにかくムーブメントを起こすのが得意です。皆までは語れませんが、例えばそのコピーの一言一句の選定やトライアンドエラーの手法は実に理にかなったもので、いつも感心させられます。加えて蓄積された消費者の属性に関するデータベースは、ネット社会ならではのもので、彼らの戦果として日々積み上げられていくのです。

 それ以上に感心させられるのは、ときに理不尽さをも伴う「伝える」という作業。もうひとつの成長要因です。朝令暮改よろしく、代表者の無茶ぶりにスタッフが右往左往することもあります。体罰をも辞さないような強烈な指導を見かけることもあります。ただ、事業の方向性がブレたり、上司が部下に強要しているわけでは決してなく、むしろブレない信念がそこにはあり、それを「伝える」ことに腐心している経営陣の姿が、そこにあるのです。
 陸上自衛隊出身の代表者は、命の懸かった極限状態が、平素とは異なり理不尽さを伴うことをよく知っています。経営という戦闘状態で、仲間を守るため悩みぬいた挙句に取捨選択することが朝令暮改に思われたり、真に戦友を育てる訓練が、現代社会になじまない教育に思われたりすることもあります。でも、こういうヒトを大切にするという面倒で泥臭いことが、結果としてヒトを育て、増収要因になっているように思えるのです。

 何かと話題の人工知能の発達により、ヒトの仕事の範囲が極めて少なくなるニュースをよく目にします。ただ、ヒトを守ったり大切にしたりするという作業はAIにはできないでしょう。LINEなどでは伝わらない空気感は目を見て話さなければ理解できないでしょうし、多様化する社会において常識感をすり合わせるためには、膝をつき合わせる必要があるでしょう。デキの悪いと評価されるヒトに対しても自らの時間を割いて喜怒哀楽をあらわにして歩み寄るリーダーが、業績や勝利を得るのだと、粉雪舞う東欧の地で認識するのでした。

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執筆者

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南谷 康宗

経営家・個人投資家・事業戦略家

慶應義塾大学法学部卒
幼少を欧州で過ごし、帰国後サッカーに没頭。

中学からエスカレーター校に入学し、順調にスポイルされ大学卒業。 10年の金融機関勤務経験を経て独立。
現在は複数社で取締役を務め経営に携わるとともに自らも投資家として複数企業に資本投下。

クライアントの依頼に応じて事業ごとの戦略策定と起業にも携わる。
小さな成功と大きな失敗を繰り返し、不惑40歳を超えても迷い続ける人生の旅人。

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