ファンサイト通信

2018年09月20日第791号『凛として生きる』

【クリスティーナの世界】

女優の樹木希林さんが亡くなり、ふと、画家アンドリュー・
ワイエスの傑作『クリスティーナの世界』を思い出した。

1948年、アメリカ人画家 アンドリュー・ワイエスが31歳の
とき制作した彼の代表作であり、翌年ニューヨーク近代美術
館(MOMA)によって買い上げられた。

横長の画面のほとんどが枯れた草原に覆われている。
その丘の上は、どんよりとした曇り空。
その曇り空を背景に家が2棟、離れて建っている。
そして、画面中央よりやや左下に女性の後姿が描かれている。
ワンピース姿のか細い身体。
髪の毛が風に揺れている。
両の手は、しっかりと大地を捉え懸命に前進している後ろ姿。
彼女こそが、クリスティーナである。

僕はこの絵を1997年4月に(この旅では、友人であり先輩で
もある現代彫刻作家の高木修氏と成田空港で偶然にも同じフ
ライトになり、MOMAにも一緒に行った)ニューヨーク近代美
術館で初めて観た。

この作品の前に立ち(画集で観た印象とはまるで違う、あまり
の力強さと、清楚な空気に包まれ、息を呑む思いだった。

虚弱体質だったワイエスは、ほとんど学校に通わず、挿絵画家
だった父から手ほどきを受けて成長した。
彼は生涯、生まれ故郷のペンシルバニア州フィラデルフィア郊
外の自宅と、メーン州にあった別荘周辺以外は移動しなかった。

その別荘近くに住んでいたのが、クリスティーナ・オルソンだ
った。
クリスティーナは幼くして病に侵され、下半身が動かなかった。
しかし、彼女は自分のことはすべて自分でやり通した。
常に前向きな生き方に、ワイエスは感動し、尊敬の念さえ覚え
たという。

ワイエスが、クリスティーナについて語った言葉が残っている。
「多くの人が不幸の烙印を押すであろう彼女の人生を、彼女は
自ら克服した。その力をこそ、私は描きたかった」。
そして、こうも付け加えている。
「彼女は確かに身体的には不自由だっただろう。けれど、心は
自由だったのだ」。

病魔と戦いながらも、飄々と自分の世界を自由に生き続けた。
その凛とした姿に、クリスティーナと樹木希林さんが重なるよ
うにみえた。

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執筆者

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川村 隆一

ファンサイト有限会社
代表取締役

1952年1月生まれ。
日本大学芸術学部卒業。
日活株式会社、日本工学院専門学校映像デザイン美術科(現)グラフィックデザイン科専任教師、株式会社Cカンパニー、株式会社ナガセ等を経て、ファンサイト有限会社を設立。
資生堂・イオングループ・キリンビール・マツダ等の企業コミュニケーション/広報活動のためのディレクションとプランニングを手がけてきた。

【書籍】「企業ファンサイト入門」日刊工業新聞社刊 2006年
【賞】経団連海外広報センター最優秀デザイン賞(横浜銀行アニュアルレポート)

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