ファンサイト通信

2017年12月07日第758号『考え続けるという姿勢』

【欲望の痕跡】

10年以上も前のことである。
2006年4月に日刊工業新聞社から『企業ファンサイト入門』を上梓した。
2005年の夏、ダメもとを覚悟して企画を持ち込んでみた。

企画趣旨は、概ねこんなことだったと記憶している。

インターネットの特性を突き詰めると、企業が自社で運営するメディア(いま風
に言えばウォンドメディア)を充実させることの重要性と必然性は自明の理(圧
倒的にコストが安く、自社の想いを丁寧に発言できるわけだから)であり、それ
ぞれの企業の商品やサービズを愛して止まないファンとの、コミュニーケーショ
ンの受け皿となるサイトのありようを提起し提案したい、と。

いまでこそ、ファンサイトという単語を発しても、さして抵抗もなく受け止めて
くれるが、当時は企業(サービスや商品)のファンのためにサイト?
何それ・・・、といった反応の方も少なくはなかった。

その年の秋、編集担当として指導してくれた鈴木徹氏(現在書籍部部長)から連絡
があり、企画が通ったから、執筆に取り掛かるようにと、お話をいただいた。

ここから、一冊の本を書くことの地獄のような苦しみと、これまで獏とした曖昧な
(思考の霧のような)ものが、突然に開けていくような開放感を味わった。

本を書くということは、例えれば山に登るが如きのようなものである。
登っても登っても頂き(書いても書いても終わり)がなかなか見えてこない。
さらに、大きな岩石のような言葉が行く手を阻む。

例えば、「ブランド」という言葉。
日常的に当たり前のように使っていたのに、あらためて書いてみると、どんな意味
合いで使っていたのか極めて曖昧であったことに気がついた。

僕にとって「ブランド」とは何か?と。

こうなると、この「ブランド」という岩石を突破しない限り、一歩も前に進め(一
行も書け)なくなった。

そして、ウンウンと唸りながら考え、答えを出した。

一言でいえば、「ブランド」とは「企業がお客様との約束をすること」。
言い換えれば、「私たち企業はお客様に対して、〇〇を守ることをお約束します」
という、企業からお客様に対しての態度表明のことである。
自らの宣言を放棄し、この約束を違えたから(少し古い事例だが)雪印乳業も船場
吉兆も破綻した。

こうして「ブランド」だけではなく「定番」や「インサイト」「オリジナリティ」
など、いくつもの岩石のような言葉たちに、もがき苦しんだ。
その一方で、こうした言葉について自分なりの解に至ったときの納得感や喜びを体
験することもできた。

そして、この体験を通して腑に落ちたことがある。

本質的で抽象的な言葉や問い対して、(自分なりに)答えを出すということは、頭
だけで理解することは到底できない。
では、どうするのか?
頭でも心身でも普段から、まるごと考え続けるという姿勢が問われる。
少し大げさに言えば、それは生き方の態度そのもなのかもしれない。

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「ファンサイト通信」は読んでいただいているけれど、普段、あまりお仕事で
のつながりのない方から川村の会社はどんなことをしているの、との質問をい
ただきました。
ということで、弊社が制作担当しているファンサイトの事例を2つほど紹介し
ます。

「おこせん」
おこせんは、新潟県長岡市に本社がある岩塚製菓様株式会社様のお子様用おせ
んべいのファンサイトです。
おこさませんべいは国産米を使用し、50年以上のロングラン商品。
子育て中のお母さんとお父さんを応援するファンサイト。
コンテンツは「泣き止みが」がキーワードです。

「メイコミュ」
株式会社明光ネットワークジャパン様が運営する「MEIKO保護者」が集まるフ
ァンコミュニティサイト。
個人指導塾の「明光義塾」に通っている・入校を検討している保護者に向けた
コンテンツを展開しています。
掲示板を設置し、サイトコンシェルジュのダイスケがサイト訪問者にテーマを
投げかけ、訪問者との交流を促進しています。

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執筆者

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川村 隆一

ファンサイト有限会社
代表取締役

1952年1月生まれ。
日本大学芸術学部卒業。
日活株式会社、日本工学院専門学校映像デザイン美術科(現)グラフィックデザイン科専任教師、株式会社Cカンパニー、株式会社ナガセ等を経て、ファンサイト有限会社を設立。
資生堂・イオングループ・キリンビール・マツダ等の企業コミュニケーション/広報活動のためのディレクションとプランニングを手がけてきた。

【書籍】「企業ファンサイト入門」日刊工業新聞社刊 2006年
【賞】経団連海外広報センター最優秀デザイン賞(横浜銀行アニュアルレポート)

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