アイデアのヒント

2011年01月28日シングルなコンテンツ

シングルなコンテンツ

昨年の秋に発表があったAmazonのKindle Singlesが開店しました。Kindle Singlesというのは短いコンテンツを売るための仕組みで、例えば短編小説を1話だけとか、特集記事を1本だけというコンテンツが1冊の電子書籍として販売されています。1コンテンツの分量は2万ワード程度で、価格は99セントから4.99ドルです。

本好きとしては、この分量では読み足りないという印象ですが、いわゆる「読書」というイメージから離れて考えてみれば、ちょっとした時にちょこっと目を通すという別の体験と位置づけられるのかもしれません。斜め読みが、従来的な本のようなある程度分量のあるものを処理するやり方だとすると、Kindle Singlesのような小さなコンテンツでは斜め読みする必然がなくなってしまう、と言えるのかもしれません。それとも、短くなったのなら短時間で大量に摂取しようという猛者が出てくるのでしょうか。

Kindle Singles開店に合わせて、以前紹介したTEDTEDBooksをリリースしています。有名なTEDの講演に登壇したスピーカーを著者として、そのアイデアを伝えるためのシリーズと位置づけています。TEDによると“long enough to explain a powerful idea, but short enough to be read in a single sitting(強力なアイデアを伝えるには十分な長さで、ちょっと腰かけて読むには十分な短さ)”と謳っています。おもしろく思ったのは、「TEDBooksとは」の中で、暇つぶしに雑誌を眺めたりクロスワードパズルをしたりすることを、短いコンテンツに対置して書いているところでした。筆の勢いでそう書いてしまったのかもしれませんが、暇つぶしのアイテムとして考えるとなると、短いコンテンツはきっと苦戦するでしょう。

この他、懸念されるのは、短いコンテンツとは読み切りであるという先入観ができてしまうことでしょうか。従来的な読書の魅力を文脈を手繰っていくことにあるとすると、短いコンテンツはそうした文脈的なつながり感をどのようにして作っていくのかが課題となるかもしれません。それは、1つのコンテンツの内側で作るのか、他のコンテンツと外側で作るのか、または著者やコンテンツの作り手ではなく、読者によって作られるのか、またはその場を提供しているプラットフォームがそれを生み出すのか。興味深いポイントです。

いずれにしても、どのような読者に受け入れられ、どのような市場が作られるのか、今後の展開に興味津津です。

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執筆者

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伊藤 篤

旅行業界紙、旅行書出版社やパソコン誌などでのライターや編集者を経て、1995年ごろよりWeb制作に関わる。文化放送系の新卒採用向けWebサービスや中古ゴルフクラブ販売のECサイト、ファンサイトでお馴染みの「極楽クラブ」などの企画制作に携わる。2002年から株式会社オライリー・ジャパンに参加。2004年より現職。"changing the world by sharing the knowledge of innovators"のミッションの下、オープンソース・テクノロジーを中心に、最新テクノロジーを書籍化している。趣味はウクレレと、Lightweightなプログラミング言語でちょっとしたツールを書くこと。

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