アイデアのヒント

2011年01月14日ロングテールではないところ

ロングテールではないところ

hon.jpによると、ebookを個人出版するインディー作家が収益を上げていると報じています。なんでも、Amazon.comでひと月に1000部以上売り上げた作家らが立てた掲示板「1000 books a month club」に続々と報告が寄せられているのだとか。この掲示板は、Amazon.com(米国)が提供している出版ツール<!––>Amazon DTP<!––>を使って、Amazon.comの電子書籍リーダーKindle向けに出版された書籍の著者らが参加しています。Amazon DTPというのは、原稿をレイアウトするだけでなく、完成した書籍をAmazon.comのKindleストアへ出版、販売するツールです(現状では、日本語にはまだ対応していません)。

記事中で紹介されているミステリー作家のJ.A. Konrathは、早くからAmazon DTPを利用している作家のひとりです。初めての電子書籍がどのように成功したかを書いた彼のブログ記事”Ebooks and Free Books and Amazon Kindle, Oh My”によると、Kindleストアへは2009年の4月に最初の本をアップロードしたのだとか。ほとんど無名の彼が、作品の配本を無料で始めて、実験的に寄付という形で予算を募ったり、Amazon DTPを使って有料で(Amazonでは無料で配本できなかったため)配本を始めて収入が入ってくる様子などがレポートされていておもしろいです。当時は、Kindleストアでの売り上げを年間11000ドルくらいと報告しています。

今年の1月7日の投稿(”Guest Post by Robin Sullivan”)では、昨年12月の月間の売り上げ部数が紹介されています。リストの中に彼の名前がありますが、初めてのKindle書籍が46日間で2000部に満たなかったのに対して、先月は1万部となっています。また、同じ記事の中で、Kindle書籍のベストセラーを調べた結果はっきりしたこととして、「自分以外にも個人出版でうまく行っている作家はたくさんいるし、彼らが出版や出版業の経験を持っていたわけではない。(”MORE WRITERS THAN J.A. KONRATH ARE DOING WELL SELF-PUBLISHING, AND THEY DON’T HAVE PUBLISHING BACKGROUNDS”)」と言っています。おもしろい時代がやって来ているようですね。

冒頭のhon.jpの記事をツイートした人が1000つながりから言及していたKevin Kellyのブログ記事「千人の忠実なファン(原題は”1,000 True Fans”)」も、合わせて読むとおもしろいのでおすすめです。この記事が投稿されたのは2008年で、ソロアーティストが1000人のファンを作る方法を詳しく提案しています。記事の最後で「社会学者ルース・タウスが英国の芸術家を調査したところ、彼らの収入の平均は貧困最低限レベルを下回るという結果を得た。」と紹介しながらも、「創作者には、貧困でもなくスターでもない中間の居場所があると私は言いたい。それは成層圏レベルのベストセラーよりも低いけれども、ロングテールの暗がりよりは高いところだ。」と述べています。この記事のテーマである「ロングテールからの脱却」という視点で、電子出版分野での作家のあり方をあらためて考えてみるのもおもしろそうです。

*遅ればせながら、皆さま今年もよろしくお願いいたします。

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執筆者

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伊藤 篤

旅行業界紙、旅行書出版社やパソコン誌などでのライターや編集者を経て、1995年ごろよりWeb制作に関わる。文化放送系の新卒採用向けWebサービスや中古ゴルフクラブ販売のECサイト、ファンサイトでお馴染みの「極楽クラブ」などの企画制作に携わる。2002年から株式会社オライリー・ジャパンに参加。2004年より現職。"changing the world by sharing the knowledge of innovators"のミッションの下、オープンソース・テクノロジーを中心に、最新テクノロジーを書籍化している。趣味はウクレレと、Lightweightなプログラミング言語でちょっとしたツールを書くこと。

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